短縮位に固定されたラットヒラメ筋組織中のヒアルロン酸の分子量分布

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タイトル別名
  • A distribution of molecular weight of hyaluronic acid in rat soleus fixed in shortened position
  • A study using High Performance Liquid Chromatography with Reflactive Index Detector
  • 高速液体クロマトグラフィーによる検討

抄録

【はじめに】 ヒアルロン酸(HA)は結合組織における細胞間物質に分布する酸性ムコ多糖類であり、結合組織の弾粘性に関わっているとされている。HAはその分子構造から種々の分子量ものが種々の組織に存在しているが、高分子のものほど組織に弾粘性を付与する性質が高いとされている。これまで、関節液中HAは分子量の分布は報告されているが筋結合組織中HAの分子量分布は報告されていない。今回、ラットを用いて実験的に足関節不動化により作製した萎縮筋組織中HAを高速液体クロマトグラフィーにより分析し検討した。【対象と方法】 10週齢雄Wistar系ラット6匹を使用し、足関節底屈位固定群3匹(G群)および対照群3匹(C群)とした。G群は麻酔下にて片側の後肢足関節を底屈位でギプス固定し、ヒラメ筋を短縮位固定し後肢懸垂により飼育した。C群には麻酔処理のみを行った。2週間後に麻酔下でヒラメ筋を摘出し、筋組織を筋腹中央部より切り出し0.1MpH7.4リン酸緩衝液中にてHAを抽出して試料とした。各試料を前処理濾過し高速液体クロマトグラフィー(日立L-7000シリーズ、以下HPLC)により分析した。HPLC測定条件は高分子分析用のカラムOHpak SB-806M HQ(昭和電工)をカラム温度40℃で用い、移動相は0.1M硝酸ナトリウムとし検出器には示差屈折計 (日立L-7490)を用いた。なお、分子量マーカにはプルラン(昭和電工)、標準HAはヒト臍帯由来の精製品(ナカライテスク)を用いた。また別に、筋組織中のHA含有量をELISA法により定量した。【結 果】 分子量はピーク(分布%)で示すと、C群では約1.9万(15%)、約3.1万(39%)、約4.3万(46%)であったが、G群では約1.9万(14%)、約3.1万(37%)、約4.3万(48%)、約9.3万(1%)で前者の3つのピークは共通していた。一方、HA酸含有量ではG群86.68±13.15ng/mg、C群103.48±8.43ng/mgとG群で減少していた。【考 察】 検出されたピークの全てがHAと厳密に同定はできないが、高分子の糖類を分離できるカラムを用いた高分離能のHPLCという今回の方法と標準HAのピーク、およびHAが多様な分子量で存在することを考えると、ピークは全てHA、またはHAと他のムコ多糖類と考えるのが適当である。ピークが全てHAであると仮定すると、短縮位で不動におかれ生じた萎縮筋では、何らかの原因でHA含有量が減少するという中でも高分子のHA存在率が増加してしまい、そのことによって筋膜の粘性が高まり筋の伸張性が低下するというメカニズムが考えられる。この考察は短縮位で不動におかれたことによって生ずる萎縮筋の伸張性が低いという臨床的経験を生化学的に説明することを可能にしている。今後はHPLCにより筋膜中のHAを始めとしたムコ多糖類を厳密に同定し、分子量分布を検索し筋の伸張性との関連を検討することが求められる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562361856
  • NII論文ID
    130004577165
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.50.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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