回復期リハビリテーション病棟の廃用症候群

説明

【目的】本邦では、回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟の文献報告で治療成績検討の指標疾患として廃用症候群を用いる場合が多い。しかし、廃用症候群の経過やアウトカムについての詳細な調査報告は少ない。そこで今回、先行研究として茅ヶ崎市立病院回復期リハ病棟の廃用症候群について調査した。<BR><BR>【方法】入院カルテから後方視的に調査した。対象は、平成15年4月から平成17年10月に当院の回復期リハ病棟に入院した廃用症候群患者200名のうち調査が可能であった112名。平均年齢は79±8歳。平均入院期間は36±23日間。理学療法(以下,PT)施行群と非施行群について調査検討した。調査項目は、1)入院時と,退院または転院転棟(以下,退院)時の機能的自立度評価法(以下,FIM)の総得点、2)摂食,排泄,移動の生活自立状況、3)転帰である。FIM総得点の統計学的検定にはT検定を施行し、P<0.05を有意水準とした。生活自立状況は、摂食は自分で食事可能なものを自立、それ以外を介助。排泄は移動手段に関わらずトイレで1人で排泄可能なものを自立、それ以外を介助。移動は歩行補助具に関わらず1人で病棟内移動が可能なものを自立、それ以外を介助。それぞれ向上したものを改善とし、歩行補助具の向上も改善とした。<BR><BR>【結果】PT施行群84名、非施行群28名。1)入院時のPT施行群と非施行群のFIM総得点はp=0.346で有意差なし。退院時のPT施行群と非施行群のFIM総得点はp=0.467で有意差なし。PT施行群と非施行群の入院時と退院時のFIM総得点の変化は、p=0.0003で有意差を認めた。PT施行群のFIM総得点の変化はp<0.0001で有意差を認め、非施行群のFIM総得点の変化はp=0.06で有意差はなかった。2)PT施行群中、摂食改善4、排泄改善17、移動改善36。非施行群中、摂食改善1、排泄改善1、移動改善4であった。 3)転帰は、PT施行群中、自宅退院68、転院13、転棟3。非施行群中、自宅退院13、転院11、転棟4であった。<BR><BR>【考察】入院時のFIM総得点に有意差がないにも関わらず、PT施行群は有意にFIM総得点が改善することより、PTは廃用症候群の日常生活動作(以下,ADL)の向上に有効であったと考える。PTでは歩行訓練だけでなく、ADL全般にアプローチするように心がけているが、PTの効果は特に移動能力に反映していたと考える。PT施行群は自宅退院率が約80%で、非施行群の46%より高かった。今後、廃用症候群の症状とPTの内容から治療効果を分析することが課題となった。<BR><BR>【まとめ】1.回復期リハ病棟の廃用症候群を調査した。2.PT施行群は非施行群より有意にFIM総得点が改善した。3.PT施行群の自宅退院率が80%と良かった。4.廃用症候群の分析が今後の課題となった。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), E1094-E1094, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562412416
  • NII論文ID
    130004579625
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.e1094.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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