広島県大和町における水中運動「介護予防生きがい活動支援事業」と理学療法士の関わり

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抄録

【目的】<BR> 高齢世帯が増加しつつある大和町では、介護予防活動の需要は高まっている。当院では地域住民の介護予防対象者に対し、プールを利用して理学療法士(以下、PT)が水中運動指導を行っている。今回、PTが行う水中運動の効果を調査する目的でPT介入前・後の身体評価及びアンケートを実施し、検討したのでここに報告する。<BR>【対象・方法】<BR> 平成17年4月から5ヶ月間水中運動指導を行った15名(男性1名、女性14名、平均年齢71.0±5.8歳)で身体評価可能な者を対象とした。利用頻度は平均5.3回/月。1回の運動時間は50分とした。<BR> PTが1ヶ月ごとに身体評価を実施した。評価項目は、Body mass index(以下、BMI)、膝伸展筋力、握力、Functional Reach Test(以下、FRT)、開眼片脚立位である。アンケートでは、PT介入前・後の主観的健康感(身体的、精神的)と水中運動の満足度について0~10段階、また疼痛の有無について調査した。<BR>【結果】<BR> 身体評価について、BMIは24.8±2.9から24.3±2.7であり有意差を認めた。握力は22.1±5.8kgから23.3±4.9kg、膝伸展筋力は49.6±18.0%から50.9±16.7%、開眼片脚立位は30.8±19.1秒から35.9±23.2秒、FRTは29.9±5.5cmから30.2±4.7cmと平均値はいずれも上昇傾向にあったが、統計的有意差は認められなかった。アンケートについては身体的健康感7.6±1.7から7.4±1.8、精神的健康感8.4±1.5から8.8±1.4、水中運動の満足度8.3±1.8から9.2±1.0であったが有意差は認められなかった。また疼痛有と答えた方が85.7%から42.9%と減少傾向であったが有意差はなかった。<BR>【考察】<BR> 「水中運動では、浮力による免荷のため関節への負担が軽減される。粘性抵抗は筋力強化に、水温は熱産生、脂肪燃焼に役立つ」と言われている。本研究においても疼痛が減少傾向にあり、BMIに有意差があったことは上記と同様の事が伺える。今回の身体評価においてBMI以外、有意差は認められなかったが,いずれも数値的に上昇傾向にあるということは、バランス・筋力も維持され、介護予防の効果が得られたと考える。また利用者の満足度も向上した事実から、医学的知識を有するPTの専門性が生かされていると思われる。<BR> 今回、我々は水中での側方移動や後方移動など歩行を主とした運動を行った。しかし文献によると、介護予防活動で身体機能が向上した理由に筋力強化による効果が報告されている。よって今後は、より効果的な水中での運動指導を実施していくため、粘性抵抗を利用した歩行とともに個別的な筋力強化を取り入れ、地域介護予防活動に貢献していきたいと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), E1100-E1100, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562413696
  • NII論文ID
    130004579631
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.e1100.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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