両側人工股関節術症例の術後早期から行う歩容改善を目的とした試み―caster boardの使用―

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抄録

【はじめに】<BR>人工股関節置換術後、リハビリテーション(以下、リハ)において歩容改善と脱臼予防は必須課題である。今回、術後早期において荷重制限がある場合でも、運動痛が軽く用い易いダイナミックスタビリゼーションと固有受容性運動練習を試みたので、考察と共に報告する。本報告は、文書によるインフォームドコンセントを得た。<BR>【症例紹介】<BR>70歳,女性,BMI指数:23.1、術前のX線所見からCE角:右0度,左20度、臼蓋傾斜角:右30.7度,左35.5度であった。JOAスコアーは、2月18日評価にて右23,左22/13であった。歩行は、両側でのTrendelenburg sign(以下、T-sign)と右立脚期に硬性墜落跛行を認め、歩行率(steps/min)は98.36,歩幅(m)は0.33であり、逃避性跛行も認められた。連続歩行距離(m)は、100、歩行速度(m/min)は、32.78であった。当院において、2月21日左人工股関節置換術、同年6月13日右人工股関節置換術が施行された。<BR>【問題点】<BR>本症例の右人工股関節置換術前の歩容は、T-sign・硬性墜落跛行・逃避性跛行を認め、強度の内転・内旋歩行であった。よって後外方進入による術後においては、脱臼予防の指導とともに、出来る限り速やかに歩行を矯正する方向への練習が必須である。<BR>【理学療法経過】<BR>術後1日ベットサイドリハ開始。術後9日免荷立位。術後10日部分荷重立位(ソフトタッチ)caster board使用開始。術後11日室内部分荷重歩行(10kg部分荷重)。術後14日病棟内部分荷重歩行。術後16日(1/3部分荷重)歩行器歩行にて病棟1周(80m)可能・自室トイレ移動歩行器で可能・出棟リハとなりADL上の脱臼予防動作としてballoon練習を追加する。術後23日歩行時股関節内転内旋傾向改善し、2ロフストクラッチ歩行(2/3部分荷重)とする。術後30日連続歩行100m以上可能、屋外平地歩行可能。術後37日階段昇降可能、床上移動動作可能。<BR>術後142日外来リハ経過における評価では、歩行形態はT字杖歩行(左手)、硬性墜落跛行と逃避性跛行は消失し、T-signは軽減、歩行率116.39、歩幅0.5、連続歩行距離500以上、歩行速度58.19、JOA右47,左47/20であった。<BR>【考察とまとめ】<BR>術前から異常歩容のある患者の術後リハは、術後早期からの系統的練習が必要である。<BR>“癖”を取除くための歩行練習が求められるが、術後早期には疼痛性跛行や筋力不足が存在する。今回行ったダイナミックスタビリゼーションと固有受容性運動練習の要素を取入れた、caster boardやballoonを用いた練習は、大きな不快感を訴えることがなく、歩容改善や脱臼予防指導に対し、手術による除痛効果とともに、有効な相乗効果が期待できる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0370-C0370, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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