褥瘡予防クッションを利用した除圧効果の高いポジショニングについて

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抄録

【目的】褥瘡予防のポジショニングは30度側臥位が一般的であるが、それ以外の体位に関する体圧の評価は少ない。褥瘡予防にエアマット等は有効であるが、体位交換が必要と言われている。また、患者によっては自動運動の妨げとなり離床を進めにくい。今回我々は、体圧測定をもとに、エアマットを使用せずに、通常のベッドとクッションで仰臥位のポジショニングを検討した。その結果、全被検者において、褥瘡発生リスクとされている体圧、32mmHg以下での体位管理が可能であったので、多少の知見を加え報告する。<BR>【対象と方法】研究に同意を得られた健常者15名(男5名、女10名。年齢25.3±6.9歳。BMI20.8±2.7)を対象とした。BMI分類(WHOの定義)による対象者の内訳は、やせ型2名、標準型12名、肥満度1が1名であった。体圧は、標準的なベッドとマットの上に体圧測定器エルゴチェック(ABW社製、ドイツ)を置き、ポジショニング前後の安静仰臥位で測定した。体圧の値は、体位をとって1分経過した状態を記録した。全身の中で、最も高い体圧値(以下最大値)を抽出し全被検者の平均値を出した。なお仰臥位は被検者を安静臥位にし、股関節は両側とも軽度外旋外転位とした。ポジショニングにはロンボクッション大1個、小2個(ラックヘルスケア社)、ポスフィット小1個(モルテン社製)を使用した。我々が体圧分布状況をもとに考え出したポジショニングは、仰臥位にてロンボクッション大を頭頚部から肩甲帯を覆うように入れ、腰椎前弯部にポスフィットを挿入、ロンボクッション小を左右の坐骨結節から大腿遠位にかけて1個ずつ挿入した形となった。<BR>【結果】ポジショニング前の平均最大値は44.8mmHg、最高値は65.67mmHgであった。多くの被検者において最大値は仙骨部周辺であった。ポジショニング後の平均最大値は20.9mmHg、最高値は25.1mmHgであった。全被検者において32mmHg以下の除圧が得られた。<BR>【考察】体型の異なる被検者に、クッション4個を使用し仰臥位のポジショニングを行った。その結果、全被検者において体圧を32mmHg以下にコントロールできた。これは、このポジショニングが褥瘡予防に適した体位であることを示している。腰椎前弯部に小さいクッションを挿入することで体受圧面積が拡大し、仙骨部まで除圧可能になったと考えられる。この体位は中山らの安楽な体位の原則に一致しており、被検者からもポジショニングに対する不快感は聞かれなかった。今回、仰臥位でもクッションを使用すれば高い除圧効果を得られることが確認できた。このポジショニングは比較的安価で誰でも行えるため、データの個数を増やすとともに、患者への導入が示唆された。また一連の体位交換として、今回の研究と同様に他の体位についても検討をすすめていきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), E1134-E1134, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562475648
  • NII論文ID
    130004579665
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.e1134.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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