自家半腱様筋によるACL再建術術後症例の半腱様筋収縮動態と膝屈曲筋力との関係

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抄録

【はじめに】膝前十字靱帯(以下ACL)再建術において半腱様筋(以下ST)腱を用いた場合、ST腱採取側の膝関節深屈曲位での筋力低下が報告されている。この筋力低下は、ST腱採取による結果と考えられている。しかし、一方ではSTの筋断面積はハムストリングス全断面積に比して非常に小さいことから、筋力低下への影響は少ないとする意見もある。そこで膝屈曲筋力とSTの収縮動態との関連性を調べることにより、ST腱採取がおよぼす膝関節深屈曲力への影響を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】対象は同側ST腱による片側ACL再建術をうけた症例のうち術後3ヶ月以降の7名(男性4名、女性3名。平均年齢23.6歳)14膝とした。STを採取された下肢を採取側、反対側の下肢を非採取側とした。筋力測定には川崎重工製 MYORET RZ-450を使用し、随意等尺性屈曲筋力を測定した。測定肢位を腹臥位とし、膝関節屈曲角度は30度、60度、90度とした。各角度で20秒間の等尺性収縮を1回行わせ、最大トルク値を記録した。休息時間は90秒とした。また、筋力測定と同時に超音波画像診断装置(フクダ電子株式会社製UF-4100AM)を使用し、ST腱画の水平移動量を計測した。筋力測定値より、30度から60度、30度から90度へのトルク変化量を30度での屈曲トルクで除した値をトルク減衰率と、腱画移動量については最大移動量を大腿長で除した値を腱画移動率とした。統計処理にはStatView-J5.0を使用し、2群間比較にはMann-WhitneyのU検定、トルク減衰率と腱画移動率との相関関係にはPearsonの相関係数を用いた。統計学的有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】90度でのトルク減衰率と60度および90度での腱画移動率において採取側が有意に大きかった。また、採取側では、90度での腱画移動率が60度および90度でのトルク減衰率との間に有意な相関関係(r=0.640、0.603)があることを認めた。非採取側ではトルク減衰率と腱画移動率に有意な相関関係はなかった。<BR>【考察・まとめ】一般に、ST腱採取によるACL再建術では採取部は自然放置される。この際、STは収縮し、断端は近位へ移動する。そのため起始停止間距離の変動により筋出力低下に影響を与えていると考えられている。今回の研究では、採取側の膝関節深屈曲位でのトルク減衰率と腱画移動率が有意に大きく、腱画移動率とトルク減衰率との間に正の相関が認められたことから、ST腱採取が膝関節深屈曲力低下に影響していることが確認された。つまり、STは膝関節深屈曲では主働筋として働く機能を有しているのではないかと考えられた。採取後のST腱は、再生もしくは半膜様筋に癒着することも報告されているので、今後はST腱採取に伴う屈曲筋力改善の理学療法を検討していきたいと考えている。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0405-C0405, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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