TKA術前後の重心動揺の変化

  • 高見 千由里
    藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院リハビリテーション部
  • 瀧 昌也
    藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院リハビリテーション部
  • 西村 育恵
    藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院リハビリテーション部
  • 鈴木 絵美
    藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院リハビリテーション部
  • 水谷 公司
    藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院リハビリテーション部
  • 山田 純也
    藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院リハビリテーション部
  • 伊藤 直樹
    藤田保健衛生大学衛生学部リハビリテーション学科
  • 岡田 誠
    藤田保健衛生大学衛生学部リハビリテーション学科
  • 阿部 智行
    北里研究所メデイカルセンター病院整形外科
  • 才藤 栄一
    藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座

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説明

【目的】人工膝関節全置換術(TKA)による術後経過は良好という報告が多い。しかしながら外科的操作によって急激に引き起こされた関節形態の変化に適応できない症例も少なくない。今回、TKAの術前後で膝関節誤差角度と重心動揺の値の変化を検討したので報告する。<BR>【方法】対象は、片側TKAを施行した当院入院患者30名(男6名、女24名。71.7±7.4歳)とした。膝関節誤差角度の計測開始肢位は、60°リクライニング座位、膝関節屈曲70°とし、被験肢の大転子、膝関節関節裂隙中央、外果部にマーカーを貼付した。被験者は開眼にて目標角度まで片側膝関節を自動伸展させ、その角度を記録し、その後開始肢位にもどし閉眼にて覚えた角度まで自動伸展させ、その角度を記録した。記録はデジタルカメラにて撮影し、画像ソフトにて目標角度との誤差角度を求め、試行5回の平均値を算出した。重心動揺の計測は、アニマ社製グラビコーダGS 3000を使用した。計測開始肢位は静止立位とし、足角は40°とした。計測時間は開眼および閉眼にて30秒間とした。数値解析は総軌跡長(LNG)を用いた。誤差角度とLNGは術前・退院時・3ヶ月後に計測した。<BR>【結果】平均誤差角度は、術前4.7±3.1°、退院時4.6±2.1°、3ヶ月後 4.8±3.0°であり、有意差は認められなかった。平均開眼時LNGは、術前43.3±14.7cm、退院時53.2±19.6cm、3ヶ月後 47.5±16.4cmであり、術前に比べ退院時は有意に高値を示した(p<0.05)。平均閉眼時LNGは術前61.8±23.8cm、退院時80.1±41.5cm、3ヶ月後 67.5±30.1cmであり、術前に比べ退院時は有意に高値を示した(p<0.01)。また退院時に比べ3ヶ月後には有意に低値を示した(p<0.01)。誤差角度と重心動揺との間に相関は認められなかった。<BR>【考察】身体運動制御には固有受容器からの情報が重要になる。我々の先行研究において筋知覚は加齢による影響を受けにくい事を報告している。今回、TKA術前後の膝関節誤差角度に変化が認められなかった。これは、計測が自動運動であったことから、TKA術後は筋知覚情報がより優位に働いたものと考えられる。また、重心動揺と膝関節誤差角度に相関はなかったが、LNGでは術前・退院時・3ヶ月後を比較すると、開眼・閉眼とも退院時が最も高値を示した。さらに、この傾向は閉眼時の方がより高値を示した。このことは、関節構成体の一部が手術により除去されたことで、固有受容器からの情報量が低下し、一時的に姿勢制御が困難になったためではないかと推測できる。3ヶ月後には術前と同様の値になっていたことから、筋知覚を含めた他の固有受容器が代償として何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。今後は、膝関節誤差角度の計測方法を含めさらに検討を重ねていきたい。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0394-C0394, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

被引用文献 (2)*注記

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