体幹スタビリティーに重要な腹横筋および骨盤底筋の機能評価

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説明

【目的】上下肢の主動作筋の収縮に先行して腹横筋は収縮し(Hodges 1997)、予測的に姿勢を制御している。Sapsfordは、針筋電図を腹部に刺し、胃内と肛門内に電極および圧センサーを挿入し、腹横筋の収縮により骨盤底筋が収縮し、腹圧が高まることを証明している。骨盤底筋と腹横筋の収縮により腹圧が向上し、筒状の腹部が締まり骨盤と胸郭の間の連結度合いが増加し、体幹スタビリティーが向上する。DeTroyerらは、呼吸課題における腹部筋の収縮を調べる目的で、超音波診断装置を用いて針電極を道程している。安静呼吸で腹横筋は収縮しておらず、その厚さは4.6±1.0mmであった。骨盤底筋の収縮は、膀胱の形状の変化でとらえることができる(Whittaker 2004)が、その程度、また、腹横筋との関係を調べているものは少ない。<BR> 本研究の目的は、超音波診断装置を用いて、腹部課題と骨盤底部課題における腹横筋と骨盤底筋の関連について評価することである。<BR>【方法】対象は、腰部、股関節に関わる疾患を伴わず、女性は分娩経験のない者とした。女性5名と男性5名で、平均年齢が27.8±4.2歳であった。運動課題は、骨盤を直立位とした座位姿勢で、へそ引きと尿止めとし、できるだけ努力的にせず呼吸を止めないように事前に練習させた。測定機器は超音波診断装置(東芝社製femirio8)を使用し、腹横筋は、表層画像が測定できる14MHzで、骨盤底筋は、4.6MHzで測定した。腹横筋の測定は、肋骨下端と腸骨稜の間で右前腋窩線に直行する長軸像とし、骨盤底筋はWhittakerの手法に準じ、膀胱の横断面像にて膀胱後面の腹側かつ頭側への動きで測定した。腹横筋の厚さの変化量は、安静呼気終末を基準とし増加割合を算出した。骨盤底筋の活動は、安静呼気終末の膀胱内壁間距離を基準とし後面の挙上割合を算出した。<BR>【結果】安静呼気終末の腹横筋の厚さは、4.1±1.0mmであった。膀胱内壁間距離は、62.7±14.7mmであった。へそを引く課題では、腹横筋が50.5±31.1%厚くなり、膀胱後面が3.6±6.6%挙上した。尿止め課題では、腹横筋が48.1±45.5%厚くなり、膀胱後面が11.8±15.1%挙上した。へそを引く課題と尿止め課題で、腹横筋の変化量の差(p=0.86)と膀胱後面の変化量の差(p=0.12)は、有意ではなかった。<BR>【考察】安静呼気終末の腹横筋の厚さは、DeTroyerらのデータと同程度であった。超音波診断装置による腹部筋と膀胱後面の測定は、簡便であり実用的である。腹横筋の収縮は、へそを引く課題と尿止め課題で同程度であり、骨盤底筋の活動は、へそを引く課題より尿止め課題の方が大きい傾向にあった。腹横筋と骨盤底筋により腹圧を高めて体幹スタビリティーを獲得するためには、へそを引く課題より尿止め課題の方が適している可能性が示唆された。今後は、四肢運動に備えたオートマティックな体幹スタビリティーのメカニズムと程度を、超音波診断装置で臨床的に評価できる方法を検討する。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0824-A0824, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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