体幹深部筋強化に対する超音波エコーと筋電図学的検討

DOI
  • 徳富 みずき
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科 北星病院リハビリテーション科
  • 伊藤 俊一
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科
  • 隈元 庸夫
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科
  • 平山 雅教
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科 千歳豊友会病院リハビリテーション科
  • 川島 康洋
    北星病院リハビリテーション科
  • 遠藤 昭
    北星病院リハビリテーション科

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抄録

【はじめに】<BR> 近年,腰痛症患者に対する体幹深部筋活動による腰部安定化への配慮は必然とされ多くの報告が見られる.HodgesやRichardsonらは,仰臥位における腰部安定化に関して検討し,腹斜筋・腹横筋活動量が増加し,腹直筋活動が減少すると報告している.しかし,“臍を上方に引き込むように”,“深呼吸をする”と指示するとの論述や四つ這いでの指導法など,実際の臨床場面で腰痛症者に対して非常に指導し難く,患者も理解に難渋することが多い.<BR> 本報告の目的は,より具体的で指導しやすく深部筋活動が効率よく行われる方法を検討し,腰痛症者の体幹深部筋強化法の一助を得ることである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は,腰痛症の既往のない健常男性10名(平均年齢26.2±4.8歳,平均身長169.8±4.5cm,平均体重61.1±7.0kg)とした.<BR> 方法は,全て仰臥位で右下肢運動を行う際の右体幹筋について測定した.運動条件は,1)従来からの右片膝立位から右下肢のみ開脚,2)crook lyingで両下肢をタオルで固定しての右下肢開脚,3)1)での左下肢伸展,4)2)での左下肢伸展,の4条件とした.測定として,超音波エコーALOKASSD-2000を用いて,各々の運動条件下での右外腹斜筋,右内腹斜筋,腹横筋の筋幅変化を計測した.またこの際の右腹直筋,右腹斜筋群,右多裂筋の筋活動をNORAXON 社製(U.S.A.)表面筋電計マイオシステム1400を用いて導出した.<BR> 統計解析には,級内相関係数,Spearmanの順位相関係数, Kruskal-wallis H-test後Mann-Whitney U-testを用い,有意水準は5%とした.<BR>【結果と考察】<BR> 超音波エコーでの筋幅評価の再現性は,検者内・検者間とも高い再現性を認めた.また,エコーでの計測において1)・2)に比べ3)・4)の条件では腹横筋幅は有意な筋幅の増大を認めた.筋電図においては,1)・2)に比べ3)・4)では多裂筋で有意な筋放電量の増加を認めた.<BR> 超音波による体幹深部筋計測に関しては,超音波ガイドと筋電刺入技術の進歩により,Goldman,Andersson,DeTroyerらの数多くの報告が見られる.また,Gloriaらは表層筋である大腿直筋において,筋幅の増大と筋活動量増加に相関が見られたと報告している.<BR> 今回,対側下肢伸展運動により腹横筋の筋幅増加,多裂筋の筋活動量の増加が認められた.この結果から,筋幅と深部筋活動量との相関関係の詳細な検討や腰痛症者を対象とした測定が今後必要であるが,単純な下肢開脚運動でも対側下肢伸展を意識させることにより,より効率の良い体幹深部筋活動を促すことが可能であると考えられた.したがって,今回行わせた深部筋強化指導法は腰痛症者が仰臥位で簡単に施行出来、効果的な方法であると思われる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), C0403-C0403, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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