前十字靱帯損傷膝における動作中の脛骨前方移動量の変化について
説明
【目的】膝関節前十字靭帯(以下ACL)損傷例における膝関節不安定性の指標として脛骨前方移動量(以下ATT)が用いられる。ATTの測定は静的な条件下で行われることが多いため、動作中のATT変化まではわからない。そこで本研究は、CA4000を用いて動作中に起こるATTの変化について検討することを目的とした。<BR>【方法】対象はACL損傷患者20名(男性14名、女性6名、平均年齢21.6±6.9歳)をACL群、下肢に既往のない健常者20名(男性8名、女性12名、平均年齢23.9±3.8歳)を対照群とし、全員に同意を得た。被検者に三次元デジタルゴニオメーターCA4000システムを装着し、他動・自動膝伸展運動、ハーフスクワット、片脚垂直跳躍、歩行を行い、そのときのATTを測定した。他動運動時の脛骨の位置を基準値として、各動作時に脛骨が基準値からどれだけ前方へ移動したかを計算しATTとした。ATTはACL群の患側・健側間、対照群の左右間で比較し、独立2群のt検定を有意水準5%未満で行った。同時にBIODEXで大腿四頭筋とハムストリングスの筋力を、Lysholmスコア、Tegnerスコアを使用し主観的な臨床症状と個々の活動レベルを、静的な条件でのATTとしてテロスをそれぞれ評価し比較検討した。<BR>【結果および考察】CA4000の級内相関係数は、他動運動時が0.90~0.99、自動運動時が0.94~0.99で、高い再現性が示された。自動膝伸展ではACL群の膝20°~0°の患側ATTが健側より有意に増大した(p<0.05) がテロスとの相関は認められなかった(r=0.25、p<0.30)。静的な条件でATTの増大がみられても、必ずしも自動運動時にATTが増大するとは限らないことが示唆された。これには膝伸展運動に伴う転がりやすべりの複雑な運動が影響していると考えられた。ハーフスクワットは60°~30°で、垂直跳躍は60°~40°でACL群の患側ATTが健側よりも有意に低値を示した(p<0.05)。歩行時は有意ではなかったが、すべてにおいてACL群の患側ATTが健側ATTに比べて低値を示す傾向であった。さらに筋力ではACL群における患側のH/Q比が高値を示した。これらは、ACL損傷者は動作中に脛骨前方移動抑制力としてハムストリングス等の筋活動が活発になっていることを示唆していると考えられた。ACL群のLysholmスコアは不安定性と疼痛が他の項目より低得点であった。また、TegnerスコアはACL群の受傷後が受傷前より有意に低下していた(p<0.05)。ACL損傷者は痛みや不安定性が生ずることへの恐怖感のためダイナミックな動作を無意識に避けようとするため、パフォーマンスが低下するだけでなく、大腿四頭筋筋力低下と相まって、動作中の脛骨の前方引き出し力を低下させていると考えられた。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), C0749-C0749, 2005
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205562608256
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- NII論文ID
- 130005012681
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可