バランスリーチトレーニングおよびステップマシントレーニングが膝屈伸筋力とバランス能力に与える影響

説明

【目的】近年、Closed Kinetic Chain(CKC)におけるトレーニングが注目され、理学療法の分野でも下肢の筋力トレーニングとして盛んに行われている。しかし、CKCでのトレーニングがどの程度下肢機能の向上に影響を及ぼすのかを調べた報告は少ない。本研究の目的は、CKCトレーニングであるバランスリーチトレーニングとステップマシントレーニングが、膝屈伸筋力とバランス能力の向上にどのような効果があるのかを比較検討することである。<BR>【対象と方法】対象は本研究に参加することに同意した健常学生37名とし、バランスリーチトレーニング群(B群)13名(平均年齢24.7±3.6歳)、ステップマシントレーニング群(S群)14名(平均年齢24.5±4.0歳)、トレーニングを行わないコントロール群(C群)10名(平均年齢23.9±5.6歳)に分けた。B群のトレーニング方法は、Risbergらが紹介したBalance Reach ArmとBalance Reach Legとした。これらはバランスマット上で片脚立位をし、STAR(ビニールテープ8本を45度間隔で放射線状に床面に貼ったもの)と呼ばれる星形のラインに沿って最大に手や足をリーチするトレーニングである。トレーニングは右下肢に週3-4回、4週間にわたって行わせた。トレーニング時間はBalance Reach Arm1分間、Balance Reach Leg2分間とした。S群のトレーニングとして、コンビ社製のステップマシン(AEROCLIMB)を使用した。運動強度(昇段速度)は9.6Km/hとし1分間を3セット行った。期間と頻度はB群と同様とした。トレーニング効果の評価として以下の4項目を測定した。1)等速性膝屈伸最大筋力:MYORET(川崎重工)を用い角速度60,180,300deg/secにおいて測定。2)脚伸展最大筋力:Strengthergo(三菱電機)を用い回転速度は60,100rpmにおいて測定。3)バランス能力:重心動揺計(アニマ)を使用し、開・閉眼での30秒間の片脚立位時とCross Test時の重心動揺を測定。4)Star Excursion Balance Test(Balance Reach Leg最大距離):第一趾を床面に示されたSTARの方向(5方向)に向けて最大までリーチさせた時の距離を測定。<BR>【結果と考察】C群においては、すべての測定項目で有意な変化を示さなかった。B群の等速性膝伸展筋力と脚伸展筋力は有意に増加したが、等速性膝屈曲筋力では有意な変化を示さなかった。一方、S群の膝屈伸筋力と脚伸展筋力は、すべての項目で有意な変化を示さなかった。片脚立位時の重心動揺は、B群では閉眼、開眼共に有意に減少したが、S群では有意な変化はなかった。Cross Test においては、B群、S群共に有意な増加を示した。Star Excursion Balance Testでは、B群、S群共に5方向すべてにおいて有意に増加し、動的バランスの向上が認められた。本研究結果より、バランスリーチトレーニングは膝伸筋の筋力と下肢の動的・静的バランス能力を高める有効なトレーニングであり、ステップマシントレーニングは、筋力の増加はないものの動的バランスを向上させることが示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), C0338-C0338, 2004

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562638336
  • NII論文ID
    130004578151
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0338.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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