膝複合靭帯損傷における前および後十字靱帯同時再建術後の理学療法

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抄録

【目的】<BR>前十字靱帯(ACL)および後十字靱帯(PCL)同時再建術の手術療法に関する報告は多いが、術後理学療法(PT)の報告は筆者の渉猟し得た範囲では極めて少ない。今回、我々は1症例ではあるが右膝複合靱帯損傷後にACL(BPTB)・PCL(STG-hybrid)同時再建術を施行し、術後PTで良好な結果を得たので若干の考察を加え報告する。<BR><BR>【術後プロトコール】<BR>術後プロトコールは、遠山の報告(1996年)をベースに、当院のACL・PCL単独損傷の術後プロトコールを加えたものを使用した。術直後よりギプス固定、術後2週以降1年間は硬性装具を用いた。筋力トレーニングは術直後からOKCで大腿四頭筋・ハムストリングスの同時収縮を、術後8週よりCKCでハーフスクワット、6カ月よりフルスクワットを開始した。大腿四頭筋の単独収縮は、2週より膝30°屈曲位、3カ月より膝30°から60°屈曲位で等速性運動を開始した。ハムストリングスは5カ月より膝完全伸展位で等尺性運動、6カ月より等速性運動を開始した。歩行は術後3週より1/3荷重、5週で全荷重とした。応用トレーニングは術後6カ月よりステップワークを中心としたトレーニング、9カ月よりジャンプ動作が獲得されればノンコンタクトスポーツ復帰、1年でコンタクトスポーツ復帰とした。<BR><BR>【結果】<BR>術後4カ月で膝可動域制限は消失、術後16カ月で前方・後方・側方すべて動揺性を認めなかった。患健比は大腿四頭筋でピークトルク87%(180°/sec)、仕事量90%(180°/sec)、以下同様にハムストリングスで103%、110%であった。動作能力はFunctional Ability Testで4種目すべて良好となった。<BR><BR>【考察およびまとめ】<BR>複合靭帯損傷に対する手術療法については、黒澤はACL損傷を中心に再建を行い、それ以外の靱帯は二義的に考えるべきであると述べ、守屋は両十字靭帯を同時再建すれば術後拘縮の可能性大で、始めにACLのみ再建し、PCLは後日再建する方法もあると述べている。一方、Clancyは両靱帯を同時再建した方がより解剖学的位置に再建可能であると述べ、数面は複合靱帯損傷ではACL単独再建よりも同時再建の方がACLの回復が良好としており、現在も複合靭帯損傷の再建術に対する考え方に統一した見解は得られていない。後療法について、三岡は同時再建術後にはPCL不全を生じやすい、遠山は特別に慎重なPTが必要であるとし、同時収縮を用いた筋力トレーニングを推奨している。本症例においても、両再建靱帯の熟成が期待される6カ月までは、OKCとCKCで同時収縮を中心とした筋力トレーニングを行った結果、良好な結果を得ることが出来た。その際にはPCL不全を生じやすいハムストリングスの単独収縮は出来る限り行わないことが安定性の確保につながり、重要なポイントであると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), C0370-C0370, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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