観血的治療を行なった肩鎖関節脱臼症例に対する理学療法効果
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説明
【目的】<BR>肩鎖関節脱臼新鮮例に対する手術治療後、関節可動域制限を防ぐため理学療法が行われる。また、筋力増強を目的として肩関節内外転、内外旋、肩甲骨の内転・上方回旋運動を痛みの出ない範囲で積極的に行うことが推奨されている。しかし、こういった理学療法介入(PT)の効果は明らかでない。本研究ではこのような一症例に対し反復型実験法を用いPTの効果を検証したので報告する。<BR>【方法】<BR>対象は発表者であり、新鮮肩鎖関節脱臼に対しPhemister法による手術治療が行なわれた55歳男性。損傷はRockwood分類typeIIIであった。術後5週間まで他動関節可動域運動(肩屈曲90度・外転40度、肩外転0度での内外旋)を対象者自身で行った。その後、抜釘をはさんで2週間全ての運動を中止し、8週目より反復型実験計画ABABABA型デザインを用い、PTを断続的に行い15週目で実験を終了した。なお、PT実施の有無に関わらず自身による他動関節可動域運動は痛みのでない範囲で継続した。実験計画のBにあたるPTプログラムは、初回評価から肩甲骨モビライゼーション、僧帽筋上部繊維のストレッチング、僧帽筋中部繊維・菱形筋の筋力増強運動とし、同僚の理学療法士が痛みの出ない範囲でこれを行なった。PTは1回目4日、2回目4日、3回目9日間の計3回行なった。PTを行なった同じ理学療法士が実験期間中、肩関節・肩甲帯の可動域、肩甲骨のアラインメント、痛み、肩関節周囲筋筋力をMMTで測定し、結果を図表グラフ上で目視により分析した。<BR>【結果】<BR>PT実施時に肩関節屈曲・伸展・外転・水平伸展、肩甲帯屈曲の自動関節可動域が拡大したが、肩外旋、肩甲帯伸展・挙上・下制に大きな変化はなかった。肩内旋は可動域が経過と共に低下した。受傷側肩甲骨の静的アラインメントは反対側に比し内転挙上していたが経過と共に左右差は減少、上方回旋・挙上・下制の動きも左右差が少なくなった。運動痛の部位は烏口突起上内側部から肩鎖関節後面、さらに上腕骨頭前部へと移動し、軽減した。筋力はMMT4から5に改善した。<BR>【考察】<BR>関節可動域は、肩関節屈曲・外転は対象者自身による運動では改善が得られず、PT時にそれが拡大している。PTによる受傷側肩甲骨の可動範囲拡大や静的アライメントの改善がその原因と考えられる。肩外旋はPTプログラムに含まれていなかったため大きな変化がなかったかもしれない。肩内旋の可動域低下は測定上の問題と痛みが関係しているかもしれない。肩関節水平伸展、肩甲帯屈曲の改善は肩鎖関節の痛みの軽減によると考えられるが、PTとの関係は不明である。また、痛みの変化や筋力増強とPTとの関係も不明である。<BR>【まとめ】<BR>肩甲骨の運動性を改善する短期間の理学療法士による介入により肩鎖関節脱臼後の肩関節可動域制限はすばやく改善する可能性がある。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), C0369-C0369, 2005
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205562657792
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- NII論文ID
- 110004016312
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可