左大腿骨頸部骨折術後に進行卒中を併発した症例

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  • 高度難聴患者の理学療法の経験

抄録

【はじめに】臨床上、治療を進めてゆく中で、阻害因子となるコミュニケーションの障害をもつ疾患に関わる機会は少なくない。今回、自宅復帰間もない高度の難聴を有した左大腿骨頸部骨折術後の症例が脳幹部梗塞を発症し、進行卒中を併発、右片麻痺を呈した。再度、自宅退院にむけ意志疎通困難の中での治療の取り組み方を経験したので、本人、家族の了承のもと若干の考察を加え報告する。<BR>【症例提示】76歳女性。夫娘の3人暮らし。26歳の出産後より両側感音性難聴を併発。その後殆ど聞こえず。会話はジェスチャーで対応。平成17年3月4日転倒骨折し、他院にて左大腿骨人工骨頭置換術施行、同年6月3日杖歩行介助にて自宅退院。平成17年7月14日脳幹部梗塞発症、右片麻痺を呈し当院入院。7月16日、進行卒中併発のため、愛護的理学療法ベッドサイド開始。8月1日よりリハビリ室にて理学療法実施。JCS:2、HDS-R21点、構音障害あり、ROM-T:右肩、左股関節軽度の制限。左下肢筋力3レベル、感覚は右側鈍麻、Br-stage上肢4、手指5、下肢4。基本動作介助。起立は両下肢共に支持困難、歩行困難であった。又、易疲労性体力の減退が伺われた。同年10月10日自宅退院。以後、週3回のディケア、ホームヘルパー利用 。(要介護3) <BR>【治療・経過】当初の問題として、意志疎通困難、体力減退、ADL介助、歩行困難とし、早期より耐久性の向上を図るため坐位、立位を伴う治療に専念した。又、意志の疎通は、身振り、筆談等、口唇の動きを示しながら努めたが、右下肢から左下肢への支持脚の変更など、複雑な内容を求める治療になるに従い、行為上の注意、修正等に際しその都度、治療を中断せざるを得なかった。その他、症例が治療内容を把握しきれぬまま、又、不安が解消されぬまま実施しているきらいがあるなど、充実した治療を進めるに支障を来たした。<BR> 以上のことを考慮し、四つ這い、膝立ち等の姿勢保持、坐位、立位の反復、台への昇降等、本人の解りやすい簡素、単調な動作を生かしながらADL、歩行の向上へと繋げた。結果、退院時には、ベッド廻りADL自立、左下肢を支持脚としたピックアップ歩行器の歩行が、50m可能となった。<BR>【考察】本症例は、当初より比較的、麻痺側の運動機能が良好であったにもかかわらず、治療に難渋した要因は、高度の難聴による意志疎通困難のみならず、進行卒中にて長い臥床期間を要したこと、HDS-Rが21点と、痴呆の境界域内とも判断しうるなど、これらが理解、遂行において支障を来たしたものと推察された。よって、臨床において極力、本人の日頃から使い慣れた日常生活の動作を積極的に取り入れたことが、治療の進行、及び、治療上のストレス緩和に繋がると伺われた。又、急な治療の変更は、症例に混乱、困惑を与え兼ねないので、治療の単純化、手段、順序の統一を図りながら、同じ内容の中で量、負荷の増減に努めることが、円滑な治療に繋がると示唆された。<BR><BR><BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), B0049-B0049, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562673024
  • NII論文ID
    130004578973
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.b0049.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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