中学生における腰痛とその関連要因に関する研究

説明

【目的】<BR> 腰痛は一般的によく知られている疾患であり、これまで成人にのみ起こるものととらえられてきたが、近年、若年層における腰痛の存在が指摘されはじめてきた。特に、欧米では、若年者の腰痛についてさかんに疫学調査が行われ、15から50%の範囲で生じると報告されている。しかしながら、日本においての報告は少ない。そこで今回、中学生を対象に腰痛経験の実態および腰痛の関連要因について調査研究を行ったので報告する。<BR>【方法】<BR> 対象は神戸市内の中学校教諭に依頼し、調査に同意が得られた3校の中学生993名である。調査は、2007年7月に選択式および記述式調査票を留置きで配布し、生徒個々が授業中(一部自宅)に記載した。調査項目は、学年、性別、身長、体重等の身体的特徴、生徒の腰痛経験の有無、現在(ここ一ヶ月以内)の腰痛状況、両親の腰痛歴、および、生徒の生活状況を把握するために、運動、通学、食事およびテレビや勉強時間について質問を行った。ここでの腰痛とは腰に痛みを生じたことで、女子の生理痛に伴う腰痛は除外した。<BR>調査結果は、SPSS Version11.5J for Windows を用いて統計的処理を行った。<BR>【結果および考察】<BR> 調査票に記入漏れのない中学1年生から3年生の763名(76.8%)を対象とし、内訳は男子314 名、女子449名、平均年齢13.2歳であった。現在までに少なくとも一度は、腰痛を経験したことがあると回答した生徒は221名(29.0%)、現在腰痛がある回答した生徒は102名(13.4%)であった。腰痛経験率は学年とともに有意に増加傾向を示した(p<0.001)。腰痛経験があると回答した生徒221名の内、86名(38.9%)の生徒が5回以上腰痛を経験していた。しかし、腰痛を生じた時に病院を受診した生徒は27名(12.2%)、鍼灸や接骨院を受診した生徒は19名(8.6%)と少なく、147名(19.3%)の生徒は特に何も対処していなかった。このことから、若年層における腰痛に対する早期の対応が重要と考えられる。<BR> 現在の腰痛の有無と各要因との関係についてロジスティック回帰分析を行った結果、腰痛に関連する要因として、以下のことが得られた;両親の腰痛歴(オッズ比2.07; p<0.01), 2時間以上毎日スポーツに参加(オッズ比2.07; p=0.02), 3年以上のスポーツ歴(オッズ比1.76; p=0.05), 30分以上の通学時間(オッズ比2.01; p<0.01), そして朝食の欠食(オッズ比1.67; p=0.05)であった。<BR>【まとめ】<BR> 本調査の結果から、腰痛経験があると解答した生徒は29.0%と、成人と同様に腰痛発症の危険性は高く、さらに腰痛が習慣になっている生徒がいることが示唆された。以上のことから、理学療法士における生活指導を含めた腰痛予防の重要性が考えられ、今後、さらなる検討を行っていきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), C0733-C0733, 2004

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562700416
  • NII論文ID
    130004578158
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0733.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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