教育が効果的であった拘束性換気障害の1症例
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説明
【目的】今回、拘束性換気障害を呈した両上肢機能障害を持つ20代男性の呼吸理学療法を行う機会を得た。本症例は以前から日常動作で呼吸困難感を感じていたが原因がわからないため対応出来ず、無理をして動くことを続け、結果として右心不全を起こすまで症状が悪化していた。チームアプローチのなかPTは患者教育に重点をおいて実施し症状の改善が認められたためその経過を報告する。<BR>【症例】28才男性。既往に17才時、両側腕神経叢全型引き抜き損傷あり。診断名:拘束性換気障害、高炭酸ガス血症、睡眠時無呼吸症候群。現病歴:H16.5月頃より足部の浮腫出現。12月頃より息苦しさ等の症状出現。H17.2/10息苦しくて耐えられずF病院受診、検査目的で入院。しかし原因ははっきりせず、I病院へ紹介転院。精査の結果高炭酸ガス血症を伴ったSASと診断されNIPPV導入となるが改善なく3/14当院呼吸器内科紹介受診、3/31転院となる。4/1PT開始、病識は不足している印象を受ける。BMI14.7、呼吸状態は呼吸数24回/分、パターンはabdominal paradoxを呈しており、呼吸筋疲労を生じていた。胸郭、頸部の可動性は低下、肺機能は%VC27.6%と著明な拘束性換気障害を呈し呼吸筋力も低下が認められた。夜間・日中数時間NIPPVを介助にて装着し使用、起床時の腰背部痛出現していた。<BR>【経過】入院後早期に関連職種によるカンファレンスを実施、問題点を整理し治療を進めた。4/11NIPPV装着自立を目的にOT開始、自助具を用いて自立となる。4/13よりNSTラウンド開始、退院前は栄養士による栄養指導を受け4/22自宅退院。PT練習内容は呼吸筋疲労が著明であったため開始時はリラクゼーションを中心に実施、徐々にトレーニング量を増加していった。疼痛に関しては就寝時の姿勢の問題もありポジショニングの検討により消失。教育面は現在の状態、また練習の必要性を理解してもらうためオリエンテーション、指導を中心として進めていた。退院時BMI15.1、NIPPVは夜間のみ使用し良眠。呼吸パターンは改善し、胸郭、頚部の可能性も向上、肺機能は著変なく、呼吸筋力は若干の改善が認められた。退院時はホームプログラムを指導、月1回の外来にて状態チェックを行っている。退院後は復職をしながらも呼吸状態の維持はできており、社会生活に向け前向きな発言も増えてきている。<BR>【考察】慢性呼吸器疾患の呼吸リハビリテーションにおいて患者教育は重要といわれている。本症例も自己管理に向け教育が大きなポイントとなることが開始時に感じられた。そのためカンファレンスの結果から各職種がNIPPVの必要性、栄養管理、理学療法について指導を行い、その結果症例の行動変容が認められ、治療への積極性が見られていった。今回の経験により患者教育の重要性が再認識できたが、本症例で効果があがった点について検討したい。<BR><BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), D0565-D0565, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205562800384
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- NII論文ID
- 110004994926
- 130004579499
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可