糖尿病性足部潰瘍の予防を目的に屋内用装具を作製した一症例

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  • 3年4か月の経過

抄録

【目的】糖尿病性切断の原因となる足部潰瘍に対し,靴型装具の使用でChantelauらは再発を抑制し得たと報告している. 我々も潰瘍の危険因子である足底圧異常や胼胝が改善することを確認しており, 装具療法は足部潰瘍予防に対し有用であるといえる. しかし,これらの検討で使用されているのは屋外用装具である. 一日中靴を履いて生活する欧米とは異なり,本邦では屋内は裸足生活が一般的である. このため屋外用装具のみでは潰瘍予防に対して不十分と考えられる. そこで,今回屋内外の装具を作製し理学療法を継続的に施行した症例について,屋内用装具の有用性という観点で検討した.<BR>【症例紹介】50歳,男性,H9年頃:2型糖尿病および糖尿病性神経障害と診断. H12.11月:左母趾足底面および第1中足骨頭部に神経障害性潰瘍出現. H13.2.23:潰瘍に対し皮膚移植術施行されるも治癒遷延. H14.4.10:左脛骨平原骨折受傷. 4.17:ORIF施行. 6.26:1/2PWB開始. 7.5:リハビリ目的で当院へ転院.<BR>【開始時所見・入院中経過】車椅子自走にて来室. 左足底面・右第2趾足底面に皮膚損傷あり. 糖尿病性神経障害による重度知覚障害,皮膚の脆弱化,外反母趾・槌趾変形,膝・足・中足趾節関節の可動域制限及び筋力低下が認められた. 1/2PWBでの松葉杖歩行可能であったが既存の靴では潰瘍形成リスクがあると判断され,担当PTが訓練用サンダルを作製した. 7.10:2/3PWB開始. 7.17:FWB開始. 9.18:靴型装具(toe boxの拡大,rocker sole)完成. 屋内用装具としては担当PT作製の訓練用サンダルを使用することとした. 11.8:両ロフストランド杖歩行自立となり退院した. <BR>【外来時経過】H15.1.9:活動量の増加に伴い左母趾足底面に潰瘍形成し,屋内外装具の母趾部をくり抜く加工を追加した. その後,潰瘍治癒した. H16.8.23:一週間の親戚宅滞在時,cosmeticな理由で屋内用サンダルを使用せず,左母趾足底面・第1中足骨頭部に再潰瘍形成した. 屋内用サンダルを再使用し,7か月後に治癒した. H17.6.22:PT作製サンダルが損傷著しく,屋内用装具を作製した. cosmeticな面も考慮し,コンフォートタイプのサンダルを加工して使用した. インソールに加えて,靴底はrocker sole,母趾部のくり抜き加工を行った. 潰瘍既往部の足底圧は裸足歩行時6.5kg/cm2,靴型装具使用時3.0kg/cm2であった. 屋内用装具使用時も3.0kg/cm2と靴型装具と遜色のない除圧状況であった. その後,再潰瘍形成は認められていない.<BR>【まとめ】1. 本症例に作製した屋内用装具の除圧能力は屋外用装具と遜色がなかった. 2. 潰瘍予防という視点では,一週間の未使用で潰瘍形成したことを考えると,本症例では屋内用装具の使用は必須である. 3. わずかな状況の変化で再潰瘍形成を頻回にきたしており,ハイリスクな症例では頻繁なフォローアップが欠かせない.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), D0492-D0492, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205562833536
  • NII論文ID
    130004579426
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.d0492.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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