無気肺に対し胸郭外陰圧式人工呼吸器RTXが有効であった1例

説明

【目的】われわれは、開胸術後に合併する無気肺に対して、持続気道陽圧器具EzPAPによる陽圧換気、マスクバック換気とともに徒手的呼吸介助手技、体位排痰法を行ってきた。今回、先天性心疾患の開胸術後に右上葉無気肺を呈した症例に対して、胸郭外陰圧式人工呼吸器RTX(以下RTX)を併用して呼吸理学療法を行ったのでその結果を報告する。<BR><BR>【症例】平成13年1月16日生(3歳3ヶ月)の男児。出生直後、左心低形成症候群(HLHS以下HLHS)と診断された。<BR><BR>【経過】平成13年1月30日ノーウッド術施行。平成13年6月8日グレン術施行。平成16年6月1日フォンタン術施行。術後2日の胸部X線写真にて右上葉に肺炎像を認めた。術後3日目透過性がより低下し、挿管。New Port E100i による人工換気をおこなった。術後7日目呼吸理学療法の依頼が出る。マスクバック換気とともに徒手的呼吸介助手技と体位排痰法、また咳嗽を促進するための吸引を1日1回施行するとともに、持続気道陽圧器具EzPAPによる陽圧換気2~3分を1日3回のプログラムをたてた。術後8日目胸部X線写真にて無気肺の増悪を認め、RTX(吸気:-15cmH2O呼気:15cmH2O呼吸回数:30回/分)を3時間毎に左側臥位で施行された。術後16日目胸部X線写真にて無気肺の消失を確認。術後17日目RTXの回数が3回/1日となった。術後22日目抜管。術後23日目RTXは終了となった。<BR><BR>【考察】徒手的な呼吸介助手技は、その技術によっては胸郭を圧迫させる際、肺胞の再虚脱を引き起こす可能性がある。また、HLHSのような循環動態に細心の注意を払わなければならない症例に対しては、徒手的に均一でかつ効果のある陽陰圧をかけられない場合がある。このように一度の治療で無気肺の改善を期待できない場合、徒手的な呼吸介助手技による頻回な呼吸理学療法はマンパワーの点からも困難である。陽圧をかける通常の人工呼吸器では、圧は虚脱した肺胞よりも正常な肺胞のほうに流れてしまい、効果的に無気肺を改善させることはできない。RTXは、胸腹部をチャンバーの中におき、外部から周期的に内腔を陰圧にして胸郭を拡張させることによって胸郭内で陰圧を作り出し吸気を発生させ、平圧時には胸郭が自身のコンプライアンスにより自動的に収縮して呼気運動が起こる方式の人工呼吸器である。通常の呼吸器のような強制換気とは違いより生理的な呼吸に近い動きを引き出す。また、対照的で均一の圧で胸郭運動を引き起こしてくれる。開胸術後の無気肺に対する治療や無気肺の予防として、RTXによる呼吸介助法は有効ではないかと考えられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), D0580-D0580, 2005

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563013632
  • NII論文ID
    130005012812
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.d0580.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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