詳細化した視覚情報が与える姿勢制御について

DOI
  • 大橋 浩一
    JA埼玉県厚生連熊谷総合病院リハビリテーション科
  • 澁井 幸枝
    JA埼玉県厚生連熊谷総合病院リハビリテーション科

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抄録

【目的】姿勢調節に必要な情報の1つとして視覚がある。視覚は予測制御に重要な感覚であると同時に、学習における認知に有用な情報を与えることができる。しかし、物理的な状況からくる情報は同じでも、その情報をどのように解釈するかによって姿勢制御の仕方が大きく異なっている。本研究では視覚情報を詳細化することによって姿勢制御に与える影響を重心動揺計にて検討したので報告する。<BR>【対象】健常成人34名(男性13名、女性21名、年齢28.7±6.7歳)<BR>【方法】アニマ社製グラビコーダGS-11を用い、被検者がフォースプレートの上にて片脚立位(軸足)を開眼、裸足にて10秒間測定した。1m前方に壁面が来るように配置し、壁面には手を伸ばしやすい高さとして80cmの高さに十字のテープと中心に円形のシールを貼付した。以下の手順で重心動揺を測定した。まず、課題1は開眼片脚立位にて前方のシールを注視させながら身体が揺れない様に指示した。課題2として1mの円柱の木棒をよく触り長さや重みを感じてもらう(棒の情報を知覚する)。木棒を両手で把持し前方のシールを片脚立位にて数回つつき、距離感を感じてもらう。棒を水平に伸ばした肢位でシールからわずかに離しシールの枠からずれないように注視させながら、片脚立位の保持を指示した。各課題の重心動揺を経時的に記録し、その変化を比較検討した。検討項目は、各課題実施時の総軌跡長、外周面積、矩形面積とした。統計処理はt検定使用し、有意水準は0.1%未満とした。<BR>【結果】課題1の平均値は総軌跡長40.80±13.48 cm、外周面積1.93±0.72cm2、矩形面積8.56±3.66 cm2。課題2は総軌跡長38.07±10.72cm、外周面積1.45±0.46cm2、矩形面積5.98±2.48cm2であった。総軌跡長において有意差は認められなかった(p<0.001)。外周面積、矩形面積において有意な差(動揺面積の減少)が認められた(p<0.001)。<BR>【考察】私達を取り巻く環境は多種多様な情報を提供しており、その情報を探索することによって知覚者にとって価値ある情報として利用できる(アフォーダンス)。姿勢制御においても情報を探索するということが常に行われている。今回の研究では同じ1mという距離・空間に対して棒という道具を使用することで、棒が与える(アフォードしている)奥行きや揺れという情報を探索し、1mという空間に意味を見出すことができた。その結果として重心動揺面積を減少するという結果、さらにその動揺面積を減少させた運動を自発的に誘発できると言うことが示唆された。<BR>【まとめ】棒という道具の情報を身体動揺という変化の中に埋め込まれている不変情報として知覚できたことによって自身の身体動揺を棒に投射できた。また、発揮できなかった姿勢制御能力を引き出すことができ動揺面積の減少が得られた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0783-A0783, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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