急性期病院における回復期リハビリテーション病棟開設の効果
書誌事項
- タイトル別名
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- 開設前後での患者動向の比較より
説明
【はじめに】当院は、一般床681を有し第三次救急指定の総合病院である。近年進む医療制度改革により急性期病院の入院期間は短縮され、リハビリテーション治療が不十分なまま退院を余儀なくされるケースも少なくない。このような状況に対し、当院では平成15年1月より45床の回復期リハビリテーション病棟(以下、リハ病棟)を開設した。今回、当病棟の取組みと、急性期病院でのリハ病棟開設の効果について、開設前後の患者動向を比較し報告する。<BR>【対象・調査内容】対象は、リハ病棟に入院し平成15年11月15日までに退院した215名(以下、リハ病棟群)と、リハ病棟開設前に入院し理学療法実施後、平成14年中に退院し転帰が明らかな847名(以下、一般床群)である。調査は、両群および疾患別として脳血管障害・頭部外傷(以下、脳血管障害等)と大腿骨頚部骨折について、入院期間(一般病棟+リハ病棟)、自宅退院率を比較検討した。<BR>【結果】全体では、一般床群の平均入院期間と自宅退院率は各々54.9±42.2日、79%に対し、リハ病棟群では68.3±31.5日、87%で、リハ病棟群で入院期間は約14日長く、自宅退院率は約8%高かった。脳血管障害等では、一般床群の平均入院期間と自宅退院率は58.5±42.3日、71%に対し、リハ病棟群では85.6±31.4日、73%で、リハ病棟群で入院期間は約27日長く、自宅退院率の差は僅かであった。しかし、一般床群では30日以内の入院が36%を占め、31日以上の入院患者では自宅退院率は63%で、リハ病棟群より10%低かった。大腿骨頚部骨折では、一般床群の平均入院期間と自宅退院率は53.4±41.0日、62%に対し、リハ病棟群では64.6±31.7日、92%で、リハ病棟群で入院期間は約11日長く、自宅退院率は約30%も高かった。<BR>【考察】リハ病棟の目的は、ADL能力の向上と家庭復帰である。当病棟では、目的達成のためスタッフ間は勿論、スタッフと患者・家族間での情報共有と目標統一を心掛けている。そのため、患者カンファレンス(患者・家族への総合実施計画の立案と報告)強化の他、週2回の病棟カンファレンス、オープンリハ(スタッフへのデモ)を実施している。また、クリニカルパス(以下、パス)は疾患別ではなくADLに着目したステップアップ式を作成、使用している。自宅退院の阻害因子ではICFによる機能・構造障害、活動制限のみならず、参加制約が重視される。急性期病棟のパスは機能・構造障害、活動制限へのアプローチに比重があるが、当病棟パスは参加制約をも考慮し、患者・家族、スタッフが現状を把握しつつ、目標統一できる有効な手段として活用している。当院は急性期病院であり、早い時期からリハ病棟へ転科するケースも多いが、機能・能力の改善を図りながら、患者・家族、スタッフが目標統一し方向性を決定して行く取組みが、僅かな入院期間の延長で、高い自宅退院率に結びついたと考えられる。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2003 (0), G0376-G0376, 2004
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205563131264
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- NII論文ID
- 130004578570
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可