筋の量的・質的評価を可能にする臨床普及型の実践的EMG評価システム機器の開発

DOI

この論文をさがす

抄録

【目的】 近年,厚生労働省の指導により医療機関は在院期間短縮の流れにあり,理学療法も効率よく行う必要性がある.しかし,現状をみると科学的根拠に基づいた理学療法サービス(運動療法)が十分提供されているとは言い難い.そこで今,理学療法士に必要なことは,日々の臨床で行われている運動療法の効果を客観的に評価し,そのエビデンスを1つ1つ蓄積し,情報発信していくことである.客観的評価法の一つとして表面筋電図(EMG)は有効な手段である.しかし,EMGは機器が高価で,日本においてはリサーチベースで使用されていることが多く,クリニカルベースで実践的に使用されていることは少ない.そこで本研究の目的は,安価でかつ簡便な臨床普及型の筋の量的・質的筋機能評価システム機器を開発し製品化することである.<BR>【方法】 市販のバイオフィードバック用の2chポータブル表面筋電図MyoTrace(Noraxon社製)を利用し以下の開発を行った.<BR><インターフェースの開発><BR>MyoTraceの出力部(ステレオミニ)から筋電図信号を2ch及び,外部からトリガー用(予備)信号として1chの計3ch分のアナログ信号を市販のPCカード(interface社)でAD変換しパーソナルコンピュータに取り込めるようにした.<BR><モニタリングソフトの開発><BR>取り込まれたデータはモニタリングソフトで原波形及び,解析波形を1画面上で観察できるようシンプルなデザインで作成した.特徴は以下の通りである.<BR>1.短時間フーリエ変換を用いた時間周波数解析(筋の質的評価)及び,積分筋電図解析(筋の量的評価)を組み込み,解析結果のリアルタイム表示を実現した.<BR>2.解析結果は,視覚的に見やすいように棒グラフ化し,積分筋電値(IEMG)と平均周波数(MPF)を左右に並べて表示した.これにより筋活動の量的・質的評価が一目で確認可能.<BR>3.時間分解能は目的の動作に応じて,1秒,0.5秒,0.25秒,0.125秒の4パターンで切り替え可能.<BR>4.解析データ(IEMG,MPF)及びEMG生データはCSVファイルで保存可能. <BR>5.CSVファイルは表計算ソフト「Excel」で読み込み可能で,マクロ機能によりグラフ作成等のドキュメンテーション機能を持たせるようにした.<BR>【本研究成果の特徴】<BR>1.低価格化の実現により,多くの病院勤務の若手理学療法士を中心に,クリニカルベースで広く使われるようになることが期待される.<BR>2.ポータブルEMG(電池で可動)の使用により,訓練室中心の使用から病棟,屋外,在宅での使用とその使用範囲の応用は格段に拡大することが期待される.<BR><BR>本研究は平成16年度財団法人岡山県産業技術振興財団大学発新事業創出促進事業委託研究,平成17年度特別電源所在県科学技術振興事業委託健康事業「健康サポートシステム構築のための基盤技術研究」,そして,財団法人中国技術振興センター産学官連携シーズ育成事業から採択を受けた産学連携プロジェクトの一部である.<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0755-A0755, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ