痛覚関連脳磁図を用いた疼痛評価に関する検討

DOI
  • 川村 博文
    広島県立保健福祉大学保健福祉学部理学療法学科
  • 辻下 守弘
    広島県立保健福祉大学保健福祉学部理学療法学科
  • 岡崎 大資
    広島県立保健福祉大学保健福祉学部理学療法学科
  • 甲田 宗嗣
    広島県立保健福祉大学保健福祉学部理学療法学科
  • 鶴見 隆正
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科
  • 谷 俊一
    高知大学医学部運動機能学教室
  • 伊藤 勝陽
    広島大学大学院医歯薬学総合研究科

抄録

【はじめに】本研究の目的は痛覚関連脳磁図を用いて知覚神経C線維を主に刺激する唐辛子の辛味成分のCapsaicinを前腕へ塗布することにより生じる疼痛を客観的に捉え検討し疼痛の評価法を開発することである。<BR>【方法】対象は健常成人10例(男8・女2)、平均年齢30.6±6.1歳とした。本研究は広島大学医学部倫理委員会の承認を得た後、対象に説明を行ない同意を得た上で実施された。痛覚関連脳磁図の記録はNeuromag社製204ch全頭型脳磁計を用いて座位で安静、閉眼、覚醒状態にて行なった。この記録手順は被験者の左前腕背側の手関節から近位部の横10cm、縦5cmの部分に1%のCapsaicin軟膏を塗布後に疼痛が出現しVASで2、4、7の時点で行ない等価電流双極子を求めた上でMRI画像、3次元画像に投射した。サンプリング周波数は300Hz、バンドパスは0.1から25Hz、トリガーとなる電気刺激は刺激幅0.2ms、矩形波、刺激頻度2Hz、刺激強度5mAを用いCapsaicin塗布部の中心部を刺激し加算平均回数は100回であった。等価電流双極子の位置、潜時、モーメントは適合度が70%以上のものを用いた。MRIの撮影は医師の指示により診療放射線技師が行なった。<BR>【結果】Capsaicin軟膏塗布後に疼痛が出現するまでの時間はVAS2が約5分、4が10分、7が15分であった。Capsaicin塗布後の疼痛の性状はVAS2でヒリヒリ、4で熱い痛い、7でジャンジャンなどであった。等価電流双極子のモーメント値はCapsaicin軟膏塗布前の 11.1±1.8 nAmに比べてCapsaicin軟膏を一側前腕に塗布した後、VAS2が16.4±3.5 nAm、4で19.9±4.0 nAm、7で24.8±3.6 nAmと増加する傾向が認められた。特に塗布前に比べVAS7は2.2倍と有意に増加していた。疼痛量と等価電流双極子のモーメント値とは相関関係が認められた。等価電流双極子の位置はCapsaicin塗布前では第一次体性感覚野(S1)6箇所、第二次体性感覚野(S2)1箇所、前頭葉3箇所であり疼痛が増加するにつれてS1減少傾向、S2増加傾向、前頭葉増加傾向、帯状回増加傾向などが認められた。<BR>【考察】疼痛関連脳磁図では強い電気刺激及びCO2レーザー刺激を用いた研究があり疼痛反応部位の定性化、定量化が行われてきた。またCapsaicinを用いた疼痛に関するS1での反応についての研究が徐々に行われてきた。本研究では主観的な疼痛量が増加するに伴い等価電流双極子のモーメント値が増加する傾向を認めた。脳磁図では疼痛発生源と考えられ部位を確認することは空間分解能が優れているために可能でありS1、S2、前頭葉、帯状回など多くの発生源が確認できた。S1、S2は疼痛認知・識別、前頭葉、帯状回は情動、覚醒、逃避などの機能を持つものと考えられており疼痛の反応の相違がみられた。今後、疼痛関連脳磁図による等価電流双極子を用いて疼痛に対する脳反応部位の確認及び疼痛の定量化を行なうことは疼痛、疼痛治療の効果を把握する手段として有用な方法であると考えられた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), F0354-F0354, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563205504
  • NII論文ID
    130004578545
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.f0354.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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