訪問リハビリテーションにおける生体情報管理の試み

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抄録

目的訪問リハビリテーションによる在宅での機能回復訓練は、現実に即した機能を再建できるというメリットを有する。その一方で、訓練による運動負荷が生体への反応としてどのように現れるかの予測は難しく、時には危機的な状況を招来する可能性も含まれる。病院では訓練後、医師・看護師を中心とした医療スッタッフによる状態観察が継続的に行われるが、在宅での状態観察は家族にゆだねられる。訪問リハビリテーションを行うスタッフも訓練直前直後あるいは訓練中の状態に関してはある程度の観察は行えるが、時間的な制約が大きく十分な経過観察は行えないのが現状である。そこで、既に社会基盤として存在する情報通信網を活用し、在宅での生体情報を時間的、距離的な制約なくセラピストが確認できることを目的とした。システムの構成 今回は、在宅での就寝中、エアマットを用いて心電図、呼吸数の測定を試みた。システムは在宅側は生体情報送信部(生体センサノードBN6、横河電機)とエアマットレスならびに携帯端末(NTT DoCoMo)、データを受信する側はPDA(GENIOe、東芝)とPHS(P-in m@ster、NTT/シャープ)より構成される。エアマットレス上に被験者が臥床すると呼吸と心拍により微細な空気圧の変動が発生する。この空気圧はチューブを介して常時生体センサノードBN6に取り込まれ、周波数解析により自動的に1分間の心拍数、呼吸数に換算され更新される。受け側が望んだ時点で携行するPDAによりこれらの情報を読み出すことができる症例ならびに方法 症例は83歳男性で、従来の塵肺、脳梗塞等の基礎疾患に嚥下性肺炎を併発し入院加療した。全身状態安定後、家族の希望により機能訓練は行なわずに退院し在宅医療、介護に移行した。患家は病院から28km離れた山間部に位置しNTT以外の携帯やPHS等は圏外の電波環境に位置する。症例は終日ベット上で過ごし、ADLは食事が一部介助以外は全介助で要介護度4である。離床を目的としたPT訓練は関節可動域、筋力増強、基本動作、端座保持、車椅子移乗、座位保持訓練等を行なっている。訓練開始前、訓練終了後30分_から_1時間の心拍数、呼吸数を離れた地点よりPDAにて確認し訓練の負荷量を勘案した。なお、本研究は当院倫理委員会の審査承認後、本人と家族への説明と同意を得て実施した。結果と考察被験者の心拍数と呼吸数は訓練開始前、訓練終了後安定して推移していることが確認できた。同時に訓練の負荷量はその確認時間の範囲では問題がない事がわかった。本システムは、在宅リハビリ対象者の生理状態を随時観察することができるとともに、今後の状態改善に伴う訓練負荷量さらには在宅医療、介護の段階的なサービス導入の判断材料としても有用である事が推察された。本研究はNEDO(14年度新エネ健開第0603001号)によった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563254656
  • NII論文ID
    130004577348
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.665.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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