高齢な大腿骨近位部骨折患者に対する早期からの機能的予後予測
説明
【目的】高齢な大腿骨近位部骨折(大腿骨骨折)患者の機能的予後をできる限り早期から予測できれば,効率よく治療を行える.そこで,大腿骨骨折患者に対する理学療法での初期評価値をもとにして,歩行獲得の予後予測が可能であるかを検討した.<BR>【対象と方法】大腿骨骨折を受傷し,弘前市内の病院に入院した60歳以上の患者49例(男6例,女43例)を対象とした.平均年齢は77.8±8.5歳,平均入院期間は53.7±18.8日であった.48例が観血的治療(γ-nail 30例,人工骨頭14例,その他4例)を受け,1例が保存的治療を受けた.全例とも受傷前に歩行は可能であった.対象者の受傷前移動能力(屋外自立・屋外介助・ほぼ屋内歩行の3段階)・日常生活活動(Katz's Index;ADL)の状況を家族または介護者から得た.起立・歩行練習開始時に,移動能力,体幹下肢運動年齢検査(MAT),徒手筋力検査(股関節屈曲,膝関節伸展;MMT),改訂版長谷川式知能スケール(HDS-R),Japan Coma Scale(JCS)を評価した.また,入院中の夜間せん妄の有無と,合併症がある場合,心疾患(NYHA心機能分類),呼吸器疾患(Hugh-Jonesの分類),脳卒中,大腿骨骨折以外の骨関節疾患の重症度を評価した.その後,入院中に病棟での歩行が自立した自立群,自立しなかった不可群に分類した.自立群に対しては,起立・歩行練習開始から歩行自立までの日数も記録した.<BR>【結果】自立群は28例,不可群は21例であった.これらの間で差の検定,χ2検定を行った結果,年齢,受傷前移動能力・ADL,MAT,ADL,MMT,HDS-R,せん妄の有無に有意な差(p<0.01)が見られた.続いて歩行自立・不可群の分類を従属変数とした多重logistic回帰分析を行った.主にmodelχ2値や判別分割表を参考にして変数選択した結果,MAT(p<0.05)とHDS-R(p<0.01)が選択された(正判別率89.8%).ここで期間を経た値と比較するためにMATを“1週間後のMAT”に入れ換えて解析したが,modelχ2値は有意に増加しなかった.<BR> 次に,自立群を対象に歩行獲得期間(平均12.4±8.3日)の予測を試みた.歩行獲得期間を目的変数とした逐次重回帰分析では,1週間後のMAT,NYHA(共にp<0.01),HDS-R(p<0.05)の組み合わせが最も良いモデルとなった(調整済みR2=0.64).一般化加法モデルの適用も試みたが,重回帰分析の方が適合していた.<BR>【考察】歩行の可否は早期の評価値から比較的高い精度で予測できた.歩行獲得日数の予測も同様であったが,1週間後のMATが選択されており,一定期間経過した機能回復度を勘案した方が予測精度は向上すると考えた.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2003 (0), C0007-C0007, 2004
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205563330176
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- NII論文ID
- 130004578030
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可