理学療法施行時期が脳卒中患者の機能帰結に及ぼす影響

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抄録

【目的】脳卒中患者に対するリハビリテーションの効果は、発症からの経過期間により異なることが予想される。本研究の目的は、脳卒中発症後の比較的早期における理学療法施行時期が機能帰結に及ぼす影響を多施設間で検討することである。<BR>【方法】対象は、5施設で理学療法が施行された脳卒中入院患者105名であり、脳梗塞73名、脳出血32名、男性59名、女性46名、平均年齢は70.9(SD11.6)歳であった。各施設での理学療法開始時期は、発症から平均46.6(46.3)日経過しており、その開始時期からA群(1ヶ月以内:46名)、B群(1から2ヶ月:24名)、C群(2ヶ月以上:35名)の3群に分類した。なお、3群間の平均年齢には、統計学的有意差は認められなかった。<BR> 評価は、理学療法開始時と退院時に実施した。評価項目は、機能障害について麻痺側下肢運動機能、位置覚、視空間認知に関してStroke Impairment Assessment Setの6項目を測定し、その合計点を機能障害得点(0-24点)とした。また、基本動作能力の評価としてFunctional Movement Scale(FMS;11項目、0-44点)およびADL評価としてADL-20(20項目、0-60点)を使用した。これら3つの評価尺度について、機能帰結の指標として退院時の粗点、開始時と退院時の差(gain)、および差を理学療法施行期間で徐した変化率(efficiency)を算出し、3群間の差を一元配置分散分析を用いて検討した。<BR>【結果および考察】理学療法施行期間の平均は、A群36.4日、B群63.1日、C群83.0日と有意にA群が短期間であった(F=17.7、p<0.01)。退院時の機能障害得点の平均は、A群14.5、B群16.6、C群11.8と有意差を認めた(F=3.61、p<0.05)。退院時FMS得点は、それぞれ25.4、32.7、25.2と群間で有意な差はなく(F=2.41、n.s.)、退院時ADL-20得点では、それぞれ28.8、38.6、28.7と有意な差を認めた(F=3.14、p<0.05)。差(gain)に関しては、機能障害得点の平均でA群2.8、B群2.4、C群1.3(F=3.15、p<0.05)、ADL-20得点でそれぞれ10.6、7.3、5.7(F=4.44、p<0.05)とA群で高値を示したが、FMS得点はそれぞれ8.7、6.0、5.7と有意な差を認めなかった(F=2.15、n.s.)。変化率(efficiency)に関しては3つの評価尺度ともにA群が有意に高値を示した。以上から、機能障害とADLは施行時期によって影響されやすいが、基本動作能力はどの時期においても、効果が比較的安定していることが示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), B0694-B0694, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563360640
  • NII論文ID
    130004578015
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.b0694.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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