妊婦および褥婦における腰痛の実態調査

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【はじめに】妊婦は妊娠中の腰痛を胎児の成長に伴う体型変化によるものと容易に想像し医療機関に相談することなく妊娠生活を送り、出産後も痛みを有していることが少なくないといわれている。また、妊娠中の腰痛は体型変化により腰椎前彎を来たす腰椎由来の腰痛(一般的な腰背部痛)とリラキシンホルモン作用で関節構成靱帯を弛緩させ異常可動性を来たし痛みが誘発される骨盤由来の腰痛が報告されている。しかし、その実態に関する本邦での報告は少なく、産前産後の腰痛に対する予防対策が確立しているとは言い難い。そこで、妊婦の腰痛に介入することおよび産後の腰痛を予防することを目的に、本研究では出産後1ヶ月の褥婦を対象に妊娠期および産褥期における腰痛の基礎調査を行った。【対象と方法】茨城県内産婦人科で出産し、出産後1ヶ月健診を受診した108名のうち帝王切開を除く初産婦46名(平均年齢27.0±4.8歳)、経産婦49名(平均年齢29.5±4.0歳)を対象に腰痛に関する後ろ向き面接調査を実施した。調査項目は、対象者の基本的属性(年齢、身体的特徴、分娩時情報)、妊娠以前・初期・中期・後期・産褥1週・1ヶ月における腰痛の有無・部位・程度、前回妊娠時の腰痛に関する情報、腰痛により制限される日常生活動作、妊娠期における医療機関への腰痛相談の有無等とした。【結果】 (1)妊娠期に腰痛を呈した女性は対象者の78.9%であり、産褥1週時点では38.5%、産褥1ヶ月時点では27.3%であった。痛みの発生時期は部位によって異なり、仙腸関節痛や腰背部痛の多くは妊娠後期・中期から出現し、そのうち約40%が産褥期まで残存していた。一方、恥骨結節痛や鼠径部痛は妊娠後期に出現し産褥期には消失する傾向にあった。(2)初産婦における妊娠期の痛みは産褥期の痛みと関連があり、経産婦では妊娠以前の腰痛歴に関連があった。(3)痛みの部位は仙腸関節で痛みを生じた対象者の50.5%で認められ、腰背部31.6%、鼠径部21.1%、恥骨結節部7.4%、殿部5%・腸骨稜周囲では5%の対象者で認められた。(4)妊娠期に医療機関へ腰痛の相談をした人の割合は腰痛を生じた対象者の10.5%であった。(5)仙腸関節部痛のある人は特に長時間の坐位と歩行が痛みのために制限されていた。仙腸関節痛と腰背部痛で共通して制限された動作は長時間の臥床と立位であった。【まとめ】今回の調査および国内の調査研究における妊婦および褥婦の腰痛発症率は諸外国よりも高値であるにもかかわらず、腰痛相談の割合は低かった。今後妊婦の腰痛に効果的に介入していくにあたって必要なことは、初産婦に重点的に対応することや腰背部だけはなく仙腸関節部にも着目することであると考えられた。また、産前産後に関わる医療従事者側から積極的に妊婦の腰痛に関与することも大切であると思われた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563396736
  • NII論文ID
    130004577430
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.739.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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