冷却刺激による皮膚温と知覚神経伝導速度の関係について

DOI

この論文をさがす

抄録

【目的】<BR>運動や知覚神経伝導速度(SCV)は皮膚温の変化に影響することは知られており、特に皮膚温低下による速度変化は神経細胞膜の興奮によるとBolton(1982)らが報告している。しかし、22°C以下の皮膚温でSCVを計測した報告はなく、加えて皮膚温とSCVの回復過程を研究した報告もない。本研究は、20°C以下の冷却刺激によって皮膚温とSCVの関係がどのように変化するのかを目的として、氷冷却後の皮膚温とSCVの関係を経時的に検討し、若干の知見が得られたので報告する。<BR>【方法】<BR>対象は右後脛骨神経伝導ブロックがなく、実験方法と目的を説明して同意を得ている健常女性10名(平均:20.6歳、156.2cm、50.6kg)とした。実験は、室温25°Cで右膝関節30°屈曲、足関節0°中間位の腹臥位とし、右下腿を氷で30分間冷却した。SCVの測定は、逆行性SCV測定方法に準拠して、遠位刺激をアキレス腱と内果間、近位刺激を膝窩上3cmとし、記録電極を母趾に貼付した。尚、両刺激電極部とも直接氷の接触がない箇所である。皮膚温の測定は、TAKARA-D922を用いて内側腓腹筋中央で計測した。統計処理は、実験開始前、直後から50分まで5分後毎に計12回の皮膚温、潜時、SCVを反復測定ANOVAで処理し、有意水準5%の危険率で差の検定を行った。<BR>【結果】<BR>皮膚温(°C)の平均は、開始前31.8、直後12.0、5分後18.3、10分後21.2、15分後23.1、20分後24.1、25分後25.0、30分後25.6、35分後26.1、40分後26.4、45分後27.0、50分後27.3と15分以後に緩徐に上昇し、開始前、直後、5分後から35分後までの間にそれぞれ有意差(p<0.05)がみられた。潜時(ms)の平均は、開始前6.9、直後8.0、5分後8.0、10分後8.1、15分後7.9、20分後7.7、25分以後50分まで8.0~8.1で推移し、開始前と直後、5~20分後の間にそれぞれ有意差(p<0.05)がみられた。潜時導出の電極間距離365±17.5mmを潜時で除したSCV(m/s)の平均は、開始前53.1、直後46.4、5分後46.7、10分以後50分まで45.9~47.0で推移し、開始前と直後から50分後までの間にそれぞれ有意差(p<0.05)が認められた。<BR>【考察】<BR>本研究の結果から、皮膚温は実験直後から20分後まで上昇し、その後50分まで緩徐に上昇する。しかしながら、SCVは開始前に比較して6.7m/sの速度低下を示し、その後50分経過しても速度の回復は見られなかった。これは、第40回PT学術大会で皮膚温上昇とSCVの相関がないとする結果を支持するものであり、皮膚温と神経周囲温度の相関があるとしたHalar(1980)やBaysal(1993)らの研究結果が矛盾していると考えられた。つまり、Naチャンネル開閉の活性遅延が皮膚温の低下によって持続することが証明されたものと考えられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0623-A0623, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ