肺コンプライアンスと換気量の関係

  • Yokoyama Hitoshi
    聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
  • Kondou Michiyo
    聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
  • Yasui Natsuko
    聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
  • Uzura Masahiko
    聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部

Description

【はじめに】<BR> 肺コンプライアンスは肺の拡がりやすさを示す値である.なかでも静的コンプライアンス(Cst)は,肺実質の柔軟性を反映する値として知られている.そのため換気量との関連性も深く,患者の病態理解や,人工呼吸器装着下患者の理学療法,人工呼吸器からの離脱(ウィーニング)のために重要な指標である.しかし,それらの関係が明確に提示されたものはなく,また,どの程度のCst低下が問題視すべきかについての検討は不十分である.そこで本研究では,一回換気量と肺コンプライアンスとの関連を明らかにし,ウィーニングの際に有用なデータを提示することを目的として検討を行った.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は,当院リハビリテーション部がウィーニングの目的で介入した挿管下人工呼吸器管理中の急性呼吸不全患者105例(年齢67.6±16.5歳,男性54例,女性51例)である.疾病内訳は,胸腹部外科術後48例,肺炎21例,消化器疾患10例,心疾患6例,神経筋疾患6例,悪性新生物6例,熱傷5例,脊髄損傷3例であり,慢性肺疾患を有する症例や気道抵抗が15cmH2O/l/sec以上の症例は除外した.それらを対象として,ウィーニングのために活用したCstと自発呼吸下の一回換気量(TV)を診療記録より後方視的に調査した.いずれの測定も担当医と協力して実施した.Cstの測定は,人工呼吸器管理下の従量式調節換気あるいは部分的補助換気下(矩波形)の際に生じる気道内圧(吸気ポーズ圧)を読み取った.そして,機械換気における呼気時の一回換気量を気道内圧(吸気ポーズ圧-呼気終末陽圧)で除した値を採用した.TVは,挿管チューブにガス流量計(RM121)を直接接続して測定した.規則正しく,安定した呼吸状態における分時換気量を測定し,呼吸数で除した値をTVとして採用した.いずれの測定値も,抜管直前のものを採用し,さらにウィーニングの成否についても調査した.得られた結果より,CstとTVおよび,ウィーニングとの関係についてスピアマンの相関係数,ROC曲線を用いて検討した.<BR>【結果と考察】<BR> CstとTVの間には,有意な正相関を認め(r=0.64,p<0.01),両者の間に密接な関連があるものと考えられた.また,ROC曲線から求めたウィーニングの成否に関するCstのcutoff値は30ml/cmH2O(感度0.89,特異度0.61)であった.したがって,TVに影響を与え得るCstの測定値の理解は重要であり,ウィーニング成否の水準には30ml/cmH2O以上必要であることが明らかとなった.<BR> 我々は第39回同学会において,一回換気量には呼吸筋力も密接に関連することを報告した.よって,人工呼吸器装着患者の理学療法やウィーニングにおいて換気量の低下が認められる場合には,呼吸筋力,Cstの双方を理解することにより,多くの有用な情報を得られるものと推察された.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563489664
  • NII Article ID
    130005012879
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.d0741.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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