新しい体性感覚―運動連関機能評価法および運動学習課題の提案

  • 金子 文成
    独立行政法人産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門
  • 木塚 朝博
    筑波大学 人間総合科学研究科
  • 速水 達也
    筑波大学 大学院体育研究科
  • 増田 正
    東京医科歯科大学 大学院疾患生命科学研究部
  • 横井 孝志
    独立行政法人産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門

書誌事項

タイトル別名
  • ―運動平衡保持法で運動学習効果を検出するための設定条件に関する検討―

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説明

【目的】我々は,関節位置覚,運動覚,そして力覚などの体性感覚情報に,より強く依存して運動出力させるための課題呈示方法として,運動平衡保持法(Kinetic Equilibrating)を提案する。この方法は,被験者が装置から呈示された外力(呈示力)の強さを知覚し,その外力とちょうど釣り合うように自己の力を調節して出力するというものであり,神経筋促通法やスタビライゼーションなどで行われてきた抵抗負荷方法を応用したものである。運動出力が,自己の知覚する体性感覚入力情報に基づいて実行されることから,体性感覚機能およびそれに応じた運動出力機能(体性感覚-運動連関機能:SSMIF)の新規的な評価方法,および運動学習課題の呈示方法として有効であるものと推察する。しかし,その課題を有効に呈示するために決定しなくてはならない設定条件は多い。我々はこれまでの研究から,力の呈示はサイン曲線型に増減させる方法が適切であると判断した。本研究の目的は,1)運動平衡保持課題を呈示する場合の力の増減速度(周期)によって検出される結果の特徴,および2)運動学習効果を検出するために感度の良い指標は何か,を明らかにすることであった。<BR>【方法】被験者は健康な男性12名(22.5±2.2歳)であった。我々が開発した,水平面 で2次元自由度をもつ装置を床に設置した。被験者はその正面に,膝関節屈曲60°で坐位となり,足置き台に足部を固定された。課題は閉眼で実施させた。ガイドレールにより,運動方向を矢状水平軸方向に制限した。呈示力は膝関節を屈曲させる方向へ与え,被験者には膝関節伸展方向に応答出力させた。評価で用いた呈示力はサイン波形を描くように徐々に強度を増加し,35Nを最大呈示力とした。呈示力の増減周期は,最大呈示力に達するまで3秒(Fst),6秒(Med),9秒(Slw)の3種類を設定した。1試技の測定では3種類の周期が1回出現するように無作為順で組み合わせた。初日のSSMIF評価に引き続き,運動学習介入としての練習を3日間で40試技行わせ,その後に再評価を実施した。測定課題と同様に無作為順で3種類の周期を組み合わせた。評価課題の実施中には,被験者が応答出力した力と足部の位置座標を記録した。分析として,力と位置座標それぞれで呈示力に対する計測値の誤差平均値(恒常誤差),および誤差の標準偏差(変動誤差)を算出した。<BR>【結果】1)位置座標の恒常誤差において周期に有意な主効果があった。2)運動学習介入効果を検出したのは,周期Slwにおける位置座標の恒常誤差であった。3)いずれの指標も,呈示力が最大に達する直前において有意に高い数値を示した。<BR>【まとめ】周期や指標により運動学習効果検出の感度は異なっていた。本研究では,SSMIF評価指標として,位置座標における恒常誤差の感度が高いことが明らかとなった。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A0459-A0459, 2005

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

被引用文献 (1)*注記

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