ギプス固定終了後の再荷重によって起こるラットヒラメ筋の筋線維損傷に対する熱刺激の影響

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【目的】St. Pierreらは,後肢懸垂後の再荷重によってラットヒラメ筋に筋線維損傷が発生すると報告しており,共同演者もラット後肢のギプス固定終了後に再荷重を行うと筋線維損傷が発生すると報告している.また,ギプス固定などで廃用性筋萎縮を呈した症例でも過度な運動負荷や歩行訓練後に筋痛が発生することがあり,これは上記の所見と関連していると思われる.一方,非致死的なストレスが一端暴露された骨格筋はその後に致死的なストレスが加わっても細胞障害は軽度であるといわれ,この細胞防御に作用するのがHeat shock protein (Hsp)70で,これは熱によって最も発現する.すなわち,後肢懸垂やギプス固定終了後の再荷重前に熱刺激によってHsp70を大量に発現させ得れば,その後に起こる筋線維損傷の発生を予防できるのではないかと仮説できる.そこで,本研究では4週間のラット後肢のギプス固定モデルを用い,この仮説を検証した.<BR>【方法】8週齢のWistar系雄ラットを対照群と実験群に分け,実験群は両側足関節を最大底屈位で4週間ギプス固定し,以下の2群を設定した.すなわち,ギプス固定終了の2日前に麻酔下で41°Cの全身温熱暴露を60分間行い,固定期間終了後,3日間再荷重する群(熱刺激群)と全身温熱暴露は行わず,同様に3日間再荷重する群(再荷重群)である.実験終了後は,ヒラメ筋を採取し,試料の一部は凍結切片とし,H&E染色を施した後,病理学的検索と筋線維横断面積の計測を行った.また,試料の一部はWestern blot法でHsp70含有量を定量した.なお,本実験は星城大学が定める動物実験指針に準じて行った.<BR>【結果】病理所見として,再荷重群は筋細胞の円形化や壊死線維,間質の拡大や間質での単核細胞の増加などが多く認められたが,熱刺激群はこれらの所見は軽度で,壊死線維数も再荷重群より有意に低値であった.また,再荷重群の筋線維横断面積は熱刺激群より有意に高値を示した.一方,Hsp70含有量は再荷重群と熱刺激群に有意差を認めなかった.<BR>【考察】再荷重群は筋細胞が円形化し,筋線維横断面積も熱刺激群より有意に高値を示したことから浮腫の発生が窺われ,加えて,壊死の発生も顕著であった.したがって,ギプス固定終了後に再荷重を行うと筋線維損傷が発生することは明らかである.一方,熱刺激群はこれらの所見は軽度で,壊死線維数も自然回復群より有意に低値であった.つまり,再荷重を開始する前に骨格筋に熱刺激を暴露すると筋線維損傷の発生をある程度抑えることが可能であると思われる.また,Hsp70の発現量は熱刺激を暴露した2日後に最大となると報告されており,今回の実験ではこれを参考にギプス固定終了時にHsp70が最大となるよう熱刺激を暴露した.そのため,再荷重群と熱刺激群のHsp70含有量に有意差を認めなかったと思われ,今後はギプス固定終了時のHsp70含有量についても検討する必要があると思われる.

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