脳卒中片麻痺者における距離因子の変動係数

DOI
  • 阿部 浩明
    東北文化学園大学医療福祉学部 東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野
  • 出江 紳一
    東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野
  • 黒後 裕彦
    東北文化学園大学医療福祉学部
  • 菅谷 直毅
    東北公済病院宮城野分院

書誌事項

タイトル別名
  • 歩行自立度および杖や装具の使用状況との関係について

抄録

【はじめに】脳卒中麻痺者の歩行機能評価として距離因子測定がある。臨床では歩行速度の測定と同時に歩数から重複歩距離を算出し歩行機能の評価に利用している。また、距離因子の中でも変動係数(以下CV)を求め歩行の一貫性を評価する方法が報告されている。我々は脳卒中片麻痺者に対する装具装着の効果を距離因子の変動係数から検討しており、距離因子の変動係数が歩行自立度、杖や装具の使用状況とどのような関係にあるのかを検討する目的で本研究を行った。<BR>【対象と方法】本研究の趣旨を説明し同意を得られた脳卒中片麻痺者26名(年齢61.6±12.5歳、男性20名、女性6名、脳出血14名、脳梗塞12名、右麻痺15名、左麻痺11名、罹病期間231.9±360.7日、下肢BRS:IV 12名、V 6名、VI 7名)を対象とした。対象選定の条件は距離16mを杖や介助なく裸足で歩行可能な者とした。インクつきフェルトを足底に装着させ、両端に助走距離3mを含めた距離16m歩行路を裸足で杖を使用せずできる限り早く歩き、10m間の足跡から重複歩距離、麻痺側歩幅、非麻痺側歩幅、歩隔を求め各CV(標準偏差/平均値)を算出した。<BR>対象者の年齢、性別、診断名、麻痺側、罹病期間、裸足での歩行自立度(Functional ambulation categoryで4以上を自立群、それ以外を非自立群とする)、杖や装具の使用状況から3群(非使用群、杖か装具使用群、杖装具とも使用群)に分け距離因子との関連を調査した。統計処理はMann-Whitney’s U Test、Kruskal-Wallis Test、spearmanの順位相関、回帰分析を用い有意水準は5%とした。<BR>【結果】年齢、性別、診断名、麻痺側、罹病期間には有意な関連は見られなかった。歩行自立度では非自立群は麻痺側歩幅CV、非麻痺側歩幅CVが有意に高かった。杖や装具の使用状況では杖装具とも使用する群は重複歩距離CV、麻痺側歩幅CV、非麻痺側歩幅CVが有意に高かった。<BR>【考察とまとめ】結果から、CVにより評価される歩行の一貫性が歩行自立か否かを判定する際や、杖や装具の処方の際に検討される条件の一つであると考えられた。自立度や杖や装具処方の際には歩行の安定性を重視するが、一貫性も安定性評価の一助となると考えられた。また、我々は麻痺側・非麻痺側それぞれの歩幅を個別に評価することの重要性を報告しているが、今回も両歩幅CVは歩行自立度、杖や装具の使用状況とも関連しており、重複歩距離のみならずそれぞれの歩幅を評価することの重要性を示唆した。<BR> 今後もさらに多くの要因との関係や杖や装具使用後の変化について報告していく予定である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), B0622-B0622, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563533440
  • NII論文ID
    130004577985
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.b0622.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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