わが国における呼吸理学療法のEBM

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  • ―メタアナリシスの結果から―

抄録

欧米における呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)・プログラムは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象にした運動療法が中心となっている。ACCP/AACVPRによる呼吸リハのガイドラインでは、下肢のトレーニングを中心とした運動療法がもたらす効果に呼吸困難の軽減、運動耐容能の向上、健康関連QOL(HRQoL)の改善があり、運動が包括的呼吸リハの不可欠の要素であると強調している。<BR> 一方、本邦においては、対象がCOPDのみならず肺結核後遺症などの拘束性肺疾患も多い点、また施行するプログラムも運動療法のみが主体でない点において、欧米と事情が違っている。現在、わが国で行われている呼吸理学療法の内容には、1)リラクセーション:呼吸補助筋のストレッチ、呼吸介助法など、2)呼吸練習:腹式呼吸、口すぼめ呼吸など、3)呼吸筋トレーニング、4)胸郭可動域運動:呼吸筋ストレッチ体操、棒体操、徒手胸郭伸張法、5)運動療法:下肢筋トレーニング、上肢筋トレーニング、歩行練習、6)排痰法、7)日常生活指導などがあげられる。特に理学療法士が関与するプログラムには、呼吸介助法、呼吸筋ストレッチ体操、徒手胸郭伸張法など胸郭に対する直接的なアプローチが含まれていることが多く、胸郭可動域の改善にも重点が置かれている。<BR> このような特徴を有する本邦の呼吸理学療法の効果に関しては、COPD患者を中心に呼吸困難の軽減、運動耐容能の向上、およびHRQoLの改善の他、呼吸機能も改善するという文献が散見される。これは、一般に呼吸機能の改善を認めないとする欧米の報告と異なる。さらに近年では、肺結核後遺症などの拘束性換気障害に対しての有効性を示唆するデータも出てきている。<BR> こうした背景から、わが国においてもEvidence-based Medicine(EBM)基づいた呼吸理学療法が求められ、われわれは、2001年の呼吸管理学会において、欧米にはないわが国の現状を踏まえ、1991~2000年までに報告された原著論文から本邦の呼吸理学療法の効果についてメタ分析を行い報告した。今回は、2001~2004年の最新4年分の文献を追加して検討した。<BR> 今回のメタアナリシスの結果からは、わが国で行われている呼吸理学療法は、欧米と同様に呼吸困難の軽減、運動耐容能の向上、HRQoLの改善が認められ、さらに効果量は残気量の低下など呼吸機能も改善することが明らかにされた。これは、本邦において実践されている胸郭可動域運動を含む呼吸理学療法の有用性を示唆しているものと考えられる。呼吸機能の改善が、呼吸リハの最終的な目標とはならないが、今後、胸郭の拡張性や呼吸筋力との関連、さらに呼吸困難、運動耐容能などの臨床症状やHRQoLへ与える影響などを詳細に検討して行く必要性があると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), D0676-D0676, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563647488
  • NII論文ID
    130005012850
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.d0676.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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