下腿三頭筋ストレッチ前後の対側ヒラメ筋H反射の変動
説明
【目的】筋のストレッチは理学療法において日常よく用いられる手技である.効果的に筋を伸張するためには,持続的伸張やPNFにおけるホールドリラックス,同名筋の最大収縮後弛緩等が用いられている.これらの筋伸張により期待される効果について生理学的には筋組織の粘弾性と中枢神経系の関与により説明されている.後者についてはヒラメ筋H反射により先行研究がなされているが,それらは同側ヒラメ筋H反射の変動をみており,足関節の角度を変化させることにより刺激条件が変化している可能性が否定できない.ヒラメ筋H反射の変動をみるための条件として刺激条件を一定にすることが重要であり,今回はストレッチを行う下肢の対側ヒラメ筋H反射の変動について検討した.<BR>【方法】対象は説明して書面で合意を得た健康成人8名(男4女4平均年齢23歳)とし,腹臥位で軸足の下腿背側を皮膚インピーダンス5kΩ以下となるように前処置し,電極間距離3.0cmで直径8mmの銀/塩化銀表面電極を貼付した.ヒラメ筋の誘発筋電図は,電気刺激装置H-0745 (日本光電社製)を用い1sec間隔で1msecの刺激幅の方形波を用いて脛骨神経を膝窩部で電気刺激し,周波数特性3.5kHzの特製筋電アンプにて増幅し導出した. A/Dカード(コンテック製)よりノートパソコンにサンプリングレート1kHzで取り込み,誘発電位研究用プログラムEPLYZER II(キッセイコムテック社製)を用いて16回加算平均した結果を保存した.電気刺激の強さはM波が出現せずH反射が最大となる強度をモニターして決定したのち固定して用いた.プロトコールは,対照としてストレッチ前のH反射を測定した後,熟練したセラピストが対側下肢の膝関節を30度屈曲位にして下腿三頭筋のストレッチを30秒間行い,その最中及び1,3,5,10,15分後のH反射を測定した.H反射の最大振幅はEPLYZER IIのピーク検出により電圧を読み取り,対照により正規化した.<BR>【結果】H反射の正規化した振幅を平均すると,ストレッチ中は対照にくらべ82%まで減少し,ストレッチを中止することにより3分後にはほぼ回復するが,15分後までの観察では減少傾向にあった.<BR>【考察】本研究の結果に限局していえば,筋のストレッチにより対側のヒラメ筋H反射に弱い抑制の影響を与える傾向が示唆された.よって筋のストレッチ中に相反神経支配による対側における拮抗抑制がおきるが,その程度はあまり強くないことが推察された.また,個々のケースについてみると筋硬度が低い女性4名の場合ではH反射への影響はほとんど見られず,筋硬度が高くストレッチしたときに筋性抵抗を強くセラピストが感じたときには対側H反射の減少がみられる傾向があり,筋の粘弾性の要因を除外することはできないと考えられる.今後は更に方法を検討し対象を広げて研究を深めていきたい.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), A0038-A0038, 2005
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205563658880
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- NII論文ID
- 130005012037
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可