歩行観察における理学療法士の注視点(第2報)

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タイトル別名
  • 教育的介入により注視点が定まる

抄録

【目的】<BR>動作を観察・評価する理学療法士の技術は,経験的な学習過程を要する.しかし,その学習過程が十分に理解されていないため,学内教育,臨床教育では難しさを感じる.第40回日本理学療法学術大会では,理学療法士の重視する注視点が骨盤,肩(上肢),下肢関節であることと,理学療法士が理学療法学生よりも注視点発見までの時間が短いことを第1報として報告した.その結果をもとに今回,観察の学習過程にある者が,前回報告した理学療法士の注視点を情報として与えられること(教育的介入)で,注視点がどのように変化するかを明らかにする.歩行観察の学習過程を理解することで,効率の良い教育的介入方法を確立することが本研究の目的である.<BR>【対象と方法】<BR>理学療法士養成校の学生10名に対し,前後比較試験を実施した.録画したトレッドミル上での歩行をモニター上で被験者に観察してもらい,歩行の特徴について口頭でできるだけ挙げてもらった.歩行観察の際に,眼球運動計測装置(EMR-8B:株式会社ナックイメージテクノロジー社製)を用いて被験者の注視点を測定した.観察は3回繰り返し行った.その後,文章化した歩行の注視点に関する説明を読み,もう一度,歩行観察(他の歩行例)を行った.手順は介入前と同様とした.歩行例は2例を対象に,無作為に順序を決めた.得られたデータから,注視点の軌跡,軌跡全長,停留点,停留時間,特徴を挙げた個数について考察した.<BR>本研究では,被験者の権利に配慮するともに,秘密保持を厳守し,実験,研究発表することを説明し,被験者から同意を得た.<BR>【結果】<BR>(1)介入前1回目の試行における注視点の軌跡全長は,全被験者において最も長く注視点が安定しないことが示された.停留点も少なく停留しても短かった.試行回数を追うごとに注視点の軌跡全長は短くなり,停留するようになった.<BR>(2)特徴を口頭で多く挙げられる被験者は,早期から注視点が安定する傾向があった.<BR>(3)介入後1回目の試行は介入前1回目の施行より注視点の軌跡全長が短かった.すなわち,介入後は早期から注視点が安定した.しかし,特徴を挙げられる個数が増えるとは限らなかった.<BR>【考察】<BR>歩行観察など対象の特徴を認知する過程では,注視点解析が行われる.大まかな観察から特徴を探索し,重点的な解析を行うという過程が注視点解析である.結果(1)は,第1報と同様の結果であり,注視点解析を行っている様子が確認できた.結果(2)より,観察した内容を言語化することと対象を認知することとが関係すると推測できる.また,今回の実験の目的である教育的介入による注視点の変化は,結果(3)により,教育的介入が早期から注視点を安定させ,注視点解析を効率良くさせていると考えられる.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), G0911-G0911, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563888512
  • NII論文ID
    130004579762
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.g0911.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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