問題立脚型学習(Problem-Based Learning)導入体験からの検討
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抄録
【はじめに】<BR> 問題立脚型学習(Problem-Based Learning)は,自己学習への動機付けを高め,学生の問題自己解決能力の向上を目指した教育法であり,現在多くの医科大学で実施され,その有用性が報告されている.平成14年度より我々は,課程適応に必要な能動的学習行動を援助するため,カリキュラム外に週1度の割合で,「スポーツリハゼミ」と称する自由参加のゼミを開講している.その場では学生自らが事例となり,問題発見,分析,解決の過程を体験している.教員は主にテュータとして問題立脚型学習の方向性を助言している.この経験から若干の知見を得たので考察を加え報告する。<BR>【対象と方法】<BR> 平成16年11月にゼミに参加し,アンケートに同意した当校理学療法学科学生31名(男性17名、女性14名、平均年齢21±2.88歳)を対象に調査を行った.アンケートは無記名で,個人情報として性別と学年,ゼミ参加頻度を記入させた.アンケート内容は,(1)ゼミに参加した理由,(2)満足度とその理由,(3)意見・感想とした.(2)満足度の調査はVASを用い,そのほかの項目は自由記載とした.また,課程適応の指標としてゼミ参加学生と無参加学生の科目試験結果について二次元配置分散分析法を用い分析を行った.<BR>【結果】<BR> アンケート回答者の内訳は1年生6名,2年生17名,3年生8名で,ゼミ参加頻度別では毎回参加15名,時々参加7名,1,2回参加が9名であった.参加した理由としては,「興味」52%,「知識・技術の向上」45%,「臨床に役立てるため」23%,「友人の話を聞いて」13%等があった.満足度は全体平均8.09,毎回参加者9.15,時々参加者7.57,1,2回参加者6.56と,参加頻度の高いものほど有意に高かった(p<0.05).満足の理由としては「臨床に近い形で問題を考える機会が増え,考え方が徐々にわかってきた」65%,「視診・触診技術の向上」45%,「講義時間以外で実技練習ができる」35%,「先輩・後輩間の人間関係の構築」32%,「学習への意欲の高まり」23%であった.意見・感想では,「楽しく勉強できる」が多くみられた.試験結果については,無参加学生平均77.22点,ゼミ参加学生平均80.53点とゼミ参加学生の点数が高い傾向にあった.科目別では解剖学(筋・骨格系)で無参加学生平均73.05点,ゼミ参加学生80.32点とゼミ参加学生の点数が有意に高かった(p<0.01).<BR>【考察】<BR> 約3割の学生がゼミに参加しており,臨床における問題解決のための技能の修得を目的としている傾向にあった.技能や態度の修得においては説明や見学だけで修得することは困難で,技能が活用される実際の場に近い状況を設定し,学習者に与えることが学習を促進するといわれている.今回の結果からゼミ形式の問題立脚型学習が,学生の目的としている臨床における問題解決場面に近い形を提供できており,実際に自ら体験することが学習動機を高め,課程適応に必要な能動的学習行動に行動を変容させていると考えられた.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), G1137-G1137, 2005
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205563930368
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- NII論文ID
- 110004017080
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可