前十字靭帯切断後の免荷運動が断裂靭帯に及ぼす影響

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【目的】<BR>欧米をはじめとするこれまでの基礎的研究で、膝前十字靭帯(ACL)の自然治癒能力は極めて低いとされ、臨床での保存療法はほとんど選択されることはない。しかし、近年、完全断裂であっても膝関節制動装具と運動療法の保存療法により破断したACLが治癒する可能性が明らかとなった(Ihara et al; 1992,1995,1996)。保存治療によるACL治癒要因として、関節制動下での早期からの正常関節運動、生理的範囲での適切な靭帯への力学的刺激が示唆された。一方で、膝関節制動の機能を有しない装具の装着によって断裂ACLが治癒する報告や、理学療法を施行しない消極的な保存療法で治癒した症例などの報告が散見され、治癒要因はいまだに明らかになっていない。<BR>本研究の目的は、早期からの関節制動をしない自由免荷運動を行なう保存療法によって、関節と断裂ACLがどのように変化するかを明らかにし、ACL退縮における線維芽細胞の動態をアポトーシス(apoptosis)の出現状況で観察することである。<BR>【方法】<BR>週齢30週、日本白色家兎6羽を対象とした。動物の取り扱いは札幌医科大学動物実験指針に従った。膝内側より皮切・侵入し、膝蓋骨を脱臼させACLを確認後、大腿骨付着部でACLを完全に切離した。膝蓋骨を整復し関節包・皮膚を縫合した後、同側の足部をサイム切断した。平均12週経過後屠殺し、関節およびACLの観察と残存ACLのTUNEL法による免疫組織化学検査を行った。<BR>【結果】<BR>6例全例で断裂ACLが退縮していたが、変形性関節症(OA)は認められなかった。残存したACLではアポト―シス性細胞壊死が認められた。<BR>【考察】<BR>我々の先行研究で、膝関節の前後方向の制動と運動を行なった動物モデルにより靭帯再生が認められ、運動療法の有効性が明らかとなった。これまでの犬、ウサギを用いた実験で、 ACLを切断し放置あるいはギプス固定すると、膝の前後方向の不安定性、ACLの退縮、OAが生じることが知られている。アポトーシスは炎症を誘導あるいは促進する可能性が報告されている。今回の実験結果は、免荷による自由運動ではACLの退縮が認められたがOA様変化は認められず、ACLアポトーシスが膝OAを誘発する可能性が低いことを示した。<BR>細胞死はネクローシスとアポトーシス分類されるが、今回の研究よりACL退縮にはアポト―シス性細胞壊死が関与していることが明らかとなった。生体内での内的、外的要因よる細胞死は多くの場合アポトーシスによるとされる。アポトーシスの誘因として、(1)細胞の増殖に必要な因子を取り除いた場合、(2)カルシウムが細胞内に入るような刺激、(3)キラー細胞、またはこれに関係する因子、(4)放射線、および(5)ある種の細胞障害性化学物質などが挙げられている。今後、断裂ACLにおけるアポトーシスの発生要因の解明と靭帯再生との関連性を明らかにすることで、保存療法によるACL再生能を向上させることができると思われる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), C0138-C0138, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205563974016
  • NII論文ID
    130004578080
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0138.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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