外側大腿皮神経の絞扼性神経障害に関する局所解剖学的検討

書誌事項

タイトル別名
  • 下肢放散痛に対する保存療法の可能性について

説明

【はじめに】<BR>下肢の絞扼性末梢神経障害の一つである絞扼性外側大腿皮神経障害は、meralgia parestheticaとして広く認知されている。その発生頻度は高くないと言われているが、腰部椎間板ヘルニアなどの腰部疾患において外側大腿皮神経支配域である大腿外側から前面の痺れおよび放散痛を訴える症例に遭遇することは、臨床上まれでない。このような症例においては、髄核の膨隆・脱出による神経根の圧迫が痺れや放散痛の原因と考え治療されることが多いが、症状とヘルニアの高位診断が一致しないこともある。今回、外側大腿皮神経の局所解剖学的研究により同神経の絞扼部位に関して興味深い知見を得たため、若干の考察を加え報告する。<BR>【方法】<BR>対象は愛知医科大学医学部解剖セミナーに供された実習用遺体6体(男性5名、女性1名、平均年齢78.3歳)9肢であった。腹部より正中切開し腹腔内臓器を摘出、結合組織を除去し、大腰筋・腸骨筋・外側大腿皮神経を同定した。大腰筋を筋裂孔の高さで切離反転しながら外側大腿皮神経の腰神経叢からの分岐部位、同神経と大腰筋の位置関係の2項目について調査した。<BR>【結果】<BR>外側大腿皮神経の腰神経叢からの分岐様式は、1本の分枝が同神経を形成する場合(6肢)と2本の分枝が吻合して同神経を形成する場合(3肢)が認められた。これら9肢12例(2本の分枝が吻合する3肢については各々2例とみなす)の外側大腿皮神経について、腰神経叢からの分岐部位により3つのTypeに分類できた。Type1は腸骨稜より頭側で分岐するもの3例、Type2は腸骨稜の高さで分岐するもの5例、Type3は腸骨稜より尾側で分岐するもの4例であった。大腰筋との位置関係は成書に記されるように大腰筋の外側を通過するものは4例であり、8例で大腰筋内を貫通していた。<BR>【考察】<BR>絞扼性外側大腿皮神経障害は、同神経支配域である大腿外側から前面の痺れ・放散痛が主症状となる。今回、外側大腿皮神経の腰神経叢からの分岐部近傍の局所解剖学的研究から、同神経が腸骨稜の高さで分岐した後、大腰筋を貫通し、腸骨筋前面を斜走する例が観察された。これらのことから、大腰筋の短縮や筋緊張の亢進とそれに伴う骨盤の前傾・腰椎の前弯の増大により、同神経に対するfriction forceが増大し、同神経支配域に痺れ・放散痛を生じさせることが示唆された。したがって、大腰筋の伸張性の向上、骨盤・腰椎のアライメントの是正等の保存療法が腰部疾患などで生じる同神経支配域の痺れ・放散痛に対して有効になる可能性が考えられた。<BR>【まとめ】<BR>外側大腿皮神経の腰神経叢分岐部近傍の局所解剖的観察から絞扼因子について検討した。同神経は分岐部近傍においても絞扼されうることが示唆され、理学療法によって症状が改善する可能性が十分に考えられた。今後、対象数を増やすと共に症例報告が課題となると考えられた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0601-A0601, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564046720
  • NII論文ID
    130004578679
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.a0601.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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