早期スポーツ復帰を目指した膝前十字靭帯再建術とリハプロトコール
説明
【目的】膝ACL再建術後の早期スポーツ復帰のためには,初期固定の優れたACL再建法と,加速的リハビリテーションが不可欠である.当院では Double-Looped Semitendinosus and Gracilis Graft(以下DLSTG)を採用しており,本術式の利点を生かすべく作成したリハプロトコールの要点と,これにより早期に競技復帰を果たした症例を報告する.<BR>【手術法】鏡視下にて骨孔の作成と顆間形成を行う.再建靱帯は半腱様筋腱・薄筋腱を有茎で採取しこれをダブルループ(4重束)とし,大腿骨側をBone Mulch Screw,脛骨側をWasherLocにてそれぞれ骨内で強固に固定する.さらに骨孔内に骨移植を追加する.<BR>【リハプロトコール】1)手術翌日より全荷重許可,2)膝装具は不要,3)術後14日以内の独歩獲得を基本方針としている.リハは術前より介入.術後0~14日で段階的に松葉杖を除去.可動域は0~90度獲得,スクワット,バランス訓練を行う.2~4週で0~130度獲得,KBW,階段昇降,エアロバイク,ジャンプを行う.4~8週で全可動域獲得,ランニング,ターン,ステップ動作を行う.8~16週でダッシュ,持久力強化,種目別の訓練を行う.12週よりCybexを利用したOKC訓練および筋力測定を実施.16週以降,膝安定性および全可動域の獲得,大腿部筋力の患健比(健側の80%以上)回復,競技に必要な能力の獲得が確認され次第、競技復帰を許可する.<BR>【症例】25歳,男.サッカーによる新鮮ACL損傷で,当院でACL再建術を施行した.前述のプロトコールに従ってリハビリテーション(以下リハ)を行った。術後翌日より荷重開始.11日で独歩を獲得し,ボールを使用した固有感覚訓練を開始.可動域は12日で0~90度,2週よりリフティング,3週で0~120度,4 週よりパス,6週でサイドステップ,ディフェンス,7週でテーピング装着にてフットサルの練習に参加,11週で0~150度,12週で8の字走,ダッシュ,ストップを開始.Cybex筋力測定で80%の回復を認め,OKC訓練も開始した.13週で全可動域獲得.15週では90~100%の筋力回復を認めた.16週で競技復帰を許可し,22週で試合に出場した.<BR>【考察】従来,ハムストリング腱(以下STG)を用いた再建は,骨付き膝蓋腱にくらべ,移植腱採取部位の愁訴が少ないものの,移植腱が縫合糸や人工靭帯を介して関節外で固定されることが問題とされてきた.そこで近年,STGにおいては術式の改良やリハの修正(運動開始を遅らせるなど)がなされてきている.DLSTGをBone Mulch ScrewとWasherLocを用い直接固定する方法は,従来のSTGの欠点を補うことが可能である.さらに,今回作成したリハプロトコールを採用することにより,STGによるACL再建術後の安全な早期スポーツ復帰が期待できる.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2003 (0), C0042-C0042, 2004
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205564056704
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- NII論文ID
- 130004578041
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可