前十字靱帯損傷膝の関節不安定性と大腿四頭筋トルクカーブの検討
説明
【目的】前十字靭帯(ACL)損傷を有する患者の大腿四頭筋筋力を測定し、発生するトルクカーブの特徴と、その要因について検討をおこなった。<BR>【対象と方法】ACLを片側性に損傷し、術前に筋力測定をおこなった30名(男性18名、女性12名)平均年齢25.3±9.9歳、平均体重62.6±9.8kg、平均身長168.4±7.9cmを対象とした。ACL損傷後、筋力測定までの平均期間は10ヶ月であった。また、ACL以外の靭帯損傷を合併しそれによる不安定性を認めるものや、半月板損傷による痛みやロッキング症状を有するものは除外した。筋力測定には、等速性筋力測定器Chattanooga社製KINCOMを用いた。収縮様式は求心性(CON)および遠心性収縮(ECC)の2種類を角速度60deg/secで測定した。膝関節角度10~90degまでの往復を1回としてそれぞれ3回測定し、最大のpeak torqueが得られたものを測定値として採用した。パラメータとして体重あたりのpeak torque(Nm/BW×100)、体重あたりの膝屈曲30度でのtorque(Nm/BW×100)を求めた。またMedmetric社製KT-1000 30ポンドによる膝関節前方不安定性を同一術者が計測し、患健側差を算出した。検討項目は1)各パラメータの患健側での比較。2)各収縮様式で出現したトルクカーブパターンの発生率。3)トルクカーブと関節不安定性について検討した。統計処理にはpaired t-test、Pearsonのカイ2乗検定を行った。<BR>【結果】1)体重あたりのpeak torque、膝屈曲30度でのtorqueはCON、ECCとも患側で有意に低い値であった(P<0.01)。2)トルクカーブパターンは、CONでpeak torqueから膝伸展位にかけてカーブが急激に下降するパターンと、カーブの落ち込みが船底型になるパターンが健側で10例(33%)、ACL損傷膝の22例(73%)にみられた。ECCでは健側の8例(27%)、ACL損傷膝の23例(77%)にみられた(P<0.01)。3)損傷膝のCONで、トルクカーブの異常が見られた群には、KT値の健患側差の不良(3mm以上)であったものが82%存在しており、トルクカーブの異常が見られない群の38%と比較して、有意な差がみられた(P<0.05)。<BR>【考察】ACL損傷膝での大腿四頭筋筋力が健側に対して低下することは広く知られており、今回も同様の結果を示した。またトルクカーブの形状にも注目したが、患側においてより高頻度に特徴的なトルクカーブがみられた。靭帯不全によるバイオメカニカルな異常と、関節の前方不安定性が発生要因のひとつであると示唆された。<BR>【まとめ】ACL損傷膝の大腿四頭筋筋力を測定し、トルクカーブの特徴と関節不安定性を検討した。患側では量的な変化のみならず、特徴的なトルクカーブがみられた。またCONについてはKT値の健患側差の不良群により多く出現していた。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2003 (0), C0045-C0045, 2004
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205564077056
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- NII論文ID
- 130004578044
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可