PNF骨盤パターンを用いた柔軟性改善とSLRとの関係

Description

【目的】柔軟性の改善には固有受容性神経筋促通法(PNF)が有効とされている。今回我々は、指床間距離(FFD)の制限因子のひとつである腰背部筋群へホールド・リラックス(HR)を施行し、柔軟性の改善を得ることを目的とするとともに、FFDの制限因子と考えられるハムストリングスと腰背部筋群の関係を探ることとした。<BR>【方法】対象は研究目的に同意した健常者とし、PNF群(男性21名、女性20名、平均年齢21歳)とコントロール群(C群:男性15名、女性9名、平均年齢20歳)に設定した。両群ともFFDが0cm未満の者とし、結果に影響をおよぼすと考えられる脊椎疾患や股関節疾患の既往者は除外した。PNF群の手順は、1)30cm程度の台上にてStanding Trunk Flexion Meterを用いてFFDを2回測定し平均値を算出。2)背臥位にて両側の自動下肢伸展挙上(SLR)を測定し左右平均値を算出。3)側臥位で骨盤後方挙上パターンに対して腸骨稜への用手接触でHRを3秒間の保持(HOLD)を続けて3回施行。4)反対側のHR施行。5)再度FFD測定。C群は、PNF群の手順1)2)5)のみ施行した。統計学的処理は、手順1)5)それぞれのFFD値には対応のあるt-検定を用いた。またPNF群のFFD変化量とSLRの相関を検討した。なお、危険率5%未満を統計学的に有意とした。<BR>【結果】両群とも手順1)のFFD2回の再現性は級内相関で良好であった。PNF群ではHR施行前のFFDは平均-8.75±5.23cm、HR施行後平均-1.70±4.74cmとなり、有意に増加を示した。平均で7.05cm、最大で21.6cmの改善を示した。男女差は認めなかった。C群ではFFDの有意差は認めなかった。またPNF群において、FFDとSLRは従来の報告と同様に相関を認めたが、HR施行によるFFD変化量とSLRには相関を認めなかった。<BR>【考察】短時間での骨盤後方挙上へのHRで柔軟性が改善したことは、腰背部筋群に静止性収縮が起こり、腰方形筋などにリラクセーション効果が働いたこと、また腸骨稜への用手接触および骨盤への抵抗運動のため、骨盤の可動性やそれに伴う脊柱の可動性が得られたことなどが影響したと考えた。一方、FFDの変化量とSLRに相関を認めなかったことから、SLRが減少していても、腰背部へのHRで柔軟性が改善する結果となった。つまり、柔軟性(FFD)を改善するには、ハムストリングスの状態(SLR角度)は関与しないことになる。腰背部のみのアプローチで被検者が実感できるほどの柔軟性が得られたことから、臨床でのアプローチとして利用可能な結果となった。今後、持続的効果の検討やハムストリングスへのHR効果との比較、さらにはそれぞれの手技の筋電図学的再検討も課題となった。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564112896
  • NII Article ID
    130004578067
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0107.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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