足底表在感覚が起立動作に与える影響
説明
[目的]臨床上、立位動作場面で重心の後方偏位が感覚鈍麻によるものと考えられる症例に対し、足底表面からの刺激入力を行い、立位動作時手がかりのひとつとしている場面がある。そこで、これら表在感覚を介しての治療手技が実際の立位動作にどのように影響しているのかを確認するため、傾斜台によって重心を後方偏位させた起立動作における身体アライメント・床反力・反応時間及び動作時間を足底の冷却有無で比較、検討した。[方法]起立時の身体アライメントの変化を、3次元動作解析装置(オックスフォード社製VICON512)を用いて測定した。測定点には赤外線マーカ4個(頭頂、両肩甲棘の中間点、L4-5間、膝蓋骨)を用いた。床反力の測定には、床反力解析システム(キスラー社製)を用いた。床反力計の上に10°の傾斜台を設置し、足圧中心の床平面への投影線を記録した。3次元動作解析装置はサンプリング周波数60Hz、床反力解析システムは360Hzで測定した。対象は、平均年齢24.5歳の健常成人11名(男5名・女6名)とした。測定した動作は、両腕を組んだ状態のまま「下腿を垂直にした坐位」から「安定立位」までの立ち上がりとし、傾斜角10°の傾斜台上にて実施した。原則として冷却有り(以下、冷却起立)と無し(以下、通常起立)を各1試行行った。冷却起立を行う際には、踵を除き前足部のみ氷水に入れ前足部の痛覚が踵部の1/5以下になるまで冷却した。なお冷却後、足関節の運動覚がほぼ正常であることを確認した。被験者を二分して半数の被検者では冷却起立を先に行い、残り半数では通常起立を先に行った。[結果]全例で起立開始前坐位アライメントにおける頭部・体幹・下肢の位置関係には著明な変化がなかったことにより、冷却起立と通常起立の動作再現性が保証された。動作反応時間は、頭部の位置変化開始時間では冷却起立と通常起立間で差がなかったが、床反力変化開始時間では通常起立の方が速い傾向があった。頭部の前方移動距離は通常起立の方が大きかった。起立動作所要時間は冷却起立で遅延傾向を示し、起立後立位保持時の床反力動揺は冷却起立でより大きかった。[考察]足底表在感覚の低下により感覚刺激入力が減少し、床反力変化遅延、重心移動範囲の狭小化と動作緩慢、立位での重心動揺が起きたと考えられる。これは足底の表在感覚入力変化が心理的側面で動作のタイミングや支持基底面の確保に影響を与えた結果であると考えられる。また立位保持の際、足底に十分な圧をかけて重心の動揺を少なくするには、表在感覚入力が重要であると言える。本研究より、足底部表在感覚入力の変化は起立動作・立位保持に変化をもたらすことが示唆された。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2002 (0), 139-139, 2003
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205564128896
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- NII論文ID
- 130004576764
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可