結帯動作と第2肢位内旋の制限因子

Description

【目的】肩内旋動作は肩甲骨と上腕骨の位置関係を3次元的にイメージすることが難しく、制限因子も明確でない。そこで、結帯動作(以下、結帯)と第2肢位内旋動作(以下、第2内旋)を健常者及び晒し骨を使い、各骨の位置関係を計測した。遺体では両動作の制限因子を調べた。肩甲骨面から見た肩甲上腕関節の最終位での運動の違いと制限因子について、若干の考察を加えここに報告する。【対象】健常男性(年齢21_から_31歳)右肩26関節と熊本大学医学部解剖学第一講座の遺体右肩6関節を対象とした。【方法】1)被験者を椅座させ、頭部・腹部・骨盤を固定した。結帯と第2内旋を行わせ、各動作の最終位において、肩甲骨及び上腕骨の位置関係を3基本面から計測した。2)1)の測定値をもとに、晒し骨で両動作の最終位を再現した。その晒し骨の肩甲骨面を基準にして、上腕骨の内旋角、伸展角、外転角を実測した。3)2)の実測値をもとに、各々の動作の可動性に制限を引き起こした組織を遺体で調べた。【結果】肩甲骨面からみた上腕骨の位置は、結帯では内旋45°伸展12°外転5°、第2内旋では内旋41°伸展45°外転30°であった。結帯では小結節と臼蓋下方辺縁とが衝突したが、第2内旋ではそれは認められなかった。遺体での制限因子としては、結帯では後方及び上方関節包の緊張であり、第2内旋では後方及び下方関節包の緊張であった。制限因子となった筋は、両動作とも棘下筋、小円筋、烏口腕筋であったが、それぞれ制限する度合いが異なった。【考察】結帯動作最終位では、上腕骨小結節が肩甲骨臼蓋下方辺縁と衝突することから、骨頭は最大内旋していることが判る。一方、第2内旋動作最終位では、小結節と臼蓋下方辺縁が衝突するまで内旋していなかったが、これは上腕骨の外転による、下方関節包の伸張と上腕骨の内旋による後下方関節包伸張によるためと推察される。 棘下筋、小円筋は外旋筋であり、両動作の内旋動作を制限するが、結帯動作では上腕骨長軸と棘下筋の走行がほぼ直交するため、骨頭の内旋方向への動きに関し、棘下筋が主たる制限因子となる。第2内旋では、小円筋の停止部の関係で、上腕骨頭の外転の中心軸より遠位にあることと上腕骨が外転及び伸展することで伸張されるため、小円筋が主な制限因子と考えられる。烏口腕筋は内旋、伸展方向で起始と付着が離れることから、その緊張は、両動作の制限因子となり得るが、上腕骨内旋、伸展の差から、第2内旋動作により強い影響を与えるものと考えられる。このことより、結帯では棘下筋・後方及び上方関節包の緊張、第2内旋では烏口腕筋と小円筋・後方及び下方関節包の緊張が制限因子と推察されるので、これらの組織が治療のポイントになると考えられる。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564134400
  • NII Article ID
    130004576752
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.128.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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