臥床時の下肢運動が体圧・ズレ力変動に及ぼす影響

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抄録

【目的】<BR>我々は床上背臥位での下肢他動運動時において,体圧・ズレ力の上昇,そして運動終了後にズレ力が残留することを示唆してきた.今回,一側下肢他動運動時での仙骨部にかかる体圧・ズレ力の測定を,標準ベッド臥床にて施行し,床上臥床の結果と比較・検討を行った.<BR>【方法】<BR>対象は健常男性30名,平均年齢は28歳である.平均BMIは21.0であった.測定方法は,被検者を標準ベッド上に背臥位とし,右脚にCPM(ブリストル・マイヤーズスクイブ社:JACE Universal CPM system)を装着し屈伸運動を行った.開始肢位は右足関節底背屈0度,膝関節0度,股関節屈曲15度とし,その他は,解剖学的肢位とした.体圧,ズレ力の同時測定器(モルテン社:プレディア)は仙骨部に直接貼り付けた.測定は膝関節を0~120度の範囲とし,0,30,60,90,120度の各角度にて行った.膝の屈伸は2往復行い,1往復を60秒とした.また測定は2回施行し,その間10分間の休憩を挟んだ.なお,被検者は患者と同条件となるようにパジャマと枕を使用した.<BR>【結果】<BR>測定開始時の体圧の平均が55.5(37~80)mmHgであった.体圧は膝関節の屈曲に伴い増加し,伸展するとともに減少された.また2往復の屈伸運動においても圧の変化は同様で,膝屈曲120度にて最高値となり,開始動作時の約1.8倍の値を示した(平均値:屈曲運動30度74.7,60度88.9,90度88.7,120度98.7,伸展運動90度68.5,60度62.1,30度54.2,0度49.3mmHg).なお各角度での圧変化は屈曲運動60~90度以外で有意差が認められた(p&lt;0.01).ズレ力はニュートンを測定値とした.殆どの被検者に著しいズレ力の発生は認められなかった.<BR>【考察】<BR>褥瘡発生要因は,応力×時間×頻度であり,仙骨部での褥瘡発生の危険参考値は体圧が32mmHg以上,ズレ力が4N以上とされている.我々は,第19回東海北陸理学療法学術大会にて,下肢他動運動時に過度に抵抗を加えず,下肢の重みを支える事,また運動後の残留ズレ力を予想し,体位変換によるズレ力除去の必要性を報告した.前回と今回の結果を比較すると,体圧の変化は同様な傾向を示したが,ベッド上では床上に比して圧が分散されるため,測定開始前の体圧(床上87.1mmHg,ベッド55.5mmHg),上昇率(開始肢位~120度,床上:2.6倍,ベッド:1.8倍)ともに有意に低かった(p&lt;0.01).なお,測定開始前の平均体圧が既に危険参考値を大きく越えており,臥床そのものが褥瘡発生の要因になることを示唆している.ズレ力は床上と異なり,殆どの被検者に著しいズレ力の発生は認めなかった.これはベッドの柔軟性により,力を分散・吸収したためと推測する.以上のことから,下肢運動療法時には硬質な床上より柔軟性の優れたベッド等を用い,体圧やズレ力の分散を図るべきだと考える.<BR>【まとめ】

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), A0796-A0796, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564187776
  • NII論文ID
    130004577752
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0796.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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