つかまり立ち動作解析の予備調査

説明

【目的】運動療法で立ち上がり動作困難を呈する対象者に動作指導を行う.訓練初期には平行棒などにつかまらせて行う方法をとる.ところが,つかまった手元を極端に引っ張り上体を伸び上がらせるような立ち上がり場面に遭遇することも多い.将来の独力による動作自立を考えると上記の引っ張り支持による動作パターンの学習は不適切と思える.立ち上がり動作指導にあたって,上肢による動作補償の方法について一定の訓練指針が求められる.本研究の目的は,予備的調査として健常成人を対象に,上肢による動作補償の違いから運動パターンの差異を明らかにすることである.<BR>【対象と方法】健常成人23名(男性10名,女性13名).腰掛け位からの立ち上がり動作を固定した歩行器につかまって行った.身体左右が対称な動作と考え矢状面における左身体の位置の変位,左下肢の床反力を測定した.つかまる歩行器の位置は1)坐位で膝関節の垂直上方に手元がくる位置(以下Near).2)坐位で上肢を前方に伸ばしきった位置(以下Far)の2条件とした.歩行器の高さは立位時の大転子の高さとし,立ち上がり動作スピードは任意とした.測定は3次元動作解析装置,床反力計を用いた.条件間の比較にはpaired t-testを用い,5%未満の有意水準で検定を行った.<BR>【結果と考察】Near条件による手元の位置は,対象者がつかまる位置として標準的と思われる位置.Far条件の手元の位置はそれよりも前方である.立ち上がる際,上肢屈筋力を利用してより引っ張るようにして立つことを想定して行った.<BR>相分析をSchenkmanらの方法で行った.第1相の運動開始から殿部離床までの時間に差はなかったが,第2相の殿部離床から足最大背屈角度までの時間にはFar条件で有意な延長が認められた.上体前傾の指標とした股関節屈曲角度はFar条件で有意に増大した. Far条件では上肢で身体を引っ張り立つことから上体前傾角度は減少し,姿勢がより伸び上がるようなパターンになると予想したが異なっていた.特に股関節モーメントにおいても上肢補償により減少するものと予想したが結果は異なっていた.<BR>以上からFar条件によって起こった立ち上がり動作パターンは,支持となる手元が遠いため上体をより深く前傾させ手元上に覆い被さった体勢をとり立ち上がるパターンとなったと想像される.上肢の動作への関与から,床反力進行方向成分にも特徴がみられるのではと予想したが,両条件の差異を表す結果は得ることができなかった.<BR>目的とする差異を捉えるためには,対象と条件の設定方法に対しさらに検討を要すことが分かった.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), A0764-A0764, 2004

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564200576
  • NII論文ID
    130004577738
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0764.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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