坐位での骨盤前後傾運動の運動学的解析

説明

【目的】坐位保持訓練は片麻痺患者の廃用性症候群の進行を防ぐため早期リハビリテーションとして行われる.また,坐位の安定性や運動性の獲得は食事や更衣動作などの日常生活動作の向上に必要である.脊柱と骨盤の運動は坐位の姿勢保持や運動調整に重要な役割を担う.脊柱(腰椎)と骨盤(股関節)運動の特徴について,Callietは体幹屈曲伸展運動中に律動運動が行われるとして,これを腰椎骨盤リズムと呼んだ.この運動特性について過去に報告されているが,いずれの報告も立位で行われているものがほとんどであり,坐位での腰椎と骨盤の運動を調査した報告は少ない.今回我々は坐位での腰椎と骨盤運動について運動学的調査を行った.<BR>【方法】対象は健常男子4名(平均年齢23歳,身長170cm,体重57kg).これまでに神経学的,整形外科的疾患の既往はなかった.全員,研究の趣旨について十分説明し,同意を得て参加した.被検者に端坐位を保持させたまま骨盤の前傾及び後傾運動(課題1),坐位での前屈み運動と前屈み肢位から端坐位へ戻る運動(課題2)を3回ずつ行わせた.比較のため立位(課題3)においても調査した.腰椎部と骨盤部(股関節)の運動を電気角度計(Penny&Giles社製)を用いて測定し,同時に,上部下部腹直筋,大腿直筋,上部下部脊柱起立筋,内側ハムストリングの筋活動を記録し,腰椎と骨盤運動との関係について分析した.全データはPowerLab(ADInstruments製)を用いてサンプリングタイム1kHzでPCに取り込んだ. 腰椎部と骨盤部の運動について運動変化量の割合(L/P比)を求めた.<BR>【結果】課題1では骨盤部が前傾するにつれ腰椎部は逆に伸展し,前傾運動のL/P比は-0.8--0.4で常に骨盤部の運動が大きかった.課題2及び課題3の腰椎部と骨盤部の運動は腰椎部と骨盤部の運動はともに屈曲及び伸展を行っていた.課題2と課題3のL/P比はそれぞれ1.6-0.2,2.2-0.3で,運動遂行中に腰椎部と骨盤部の運動量の割合が変化していた.課題1において骨盤部が前傾し腰椎部が伸展するとき上部及び下部の脊柱起立筋の活動がみられ,骨盤部が後傾し腰椎部が屈曲するときは活動が低下していた.上部及び下部腹直筋,大腿直筋は骨盤部がより後傾するときに活動が大きくみられていた.<BR>【考察とまとめ】今回の結果から,坐位において腰椎骨盤リズムが起こることを確認した.坐位肢位を保持した状態での骨盤部の前傾運動に対して腰椎部の運動は逆方向の運動が行われ,体幹全体が前方へ倒れるのを防いでいるものと考える.脊柱起立筋の活動が顕著であり,坐位で骨盤前傾肢位を保持するために持続的に筋活動が働いていたものと考える.今後はデータ数を増やしさらに検討を加え報告する.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A1076-A1076, 2005

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564294016
  • NII論文ID
    130005012266
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a1076.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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