側対歩(ナンバ歩き)の運動力学的分析

  • Naka Takako
    国立成育医療センター第2専門診療部リハビリテーション科 東京都立保健科学大学大学院保健科学研究科
  • Yamada Takumi
    東京都立保健科学大学保健科学部理学療法学科
  • Kaneko Seiki
    東京都立保健科学大学保健科学部理学療法学科

Bibliographic Information

Other Title
  • 第2報 股関節運動の三次元解析

Description

【はじめに】同側前後肢を対に繰り出す馬の歩法を「側対歩」と言うが,ヒトの直立二足歩行における側対歩パターンは一般に「なんば歩き」と呼ばれる.明治時代以前の日本人の歩法と言われる本動作様式は,現代でも武道動作・古典芸能の歩法のみならず,耕作動作・登坂動作など動作・姿勢の安定化が要求される場面で観察されることは興味深い.第38回本学術大会において我々は側対歩反復課題中の膝関節内外反運動と身体合成重心の移動量を分析し報告した. 今回は側対歩中の股関節運動に着目しその運動特性を分析したので報告する.<BR>【方法】健常被験者7名(男性3名,女性4名,平均年齢21.0歳,平均身長166.3cm)について,普通歩行5試行と側対歩5試行を対象動作として計測を行った.被験者は身体標点37箇所に直径20mmの反射性マーカを貼付し対象動作を行い,動作中のマーカ空間位置座標と床反力を三次元動作解析装置VICON370(Oxford Metrics社)とKistler多成分床反力計9286(kistler社)を用いサンプリング周波数60Hzで計測した.測定データはPlugInGaitModelを用いて解析し,股関節角度と股関節モーメントを算出,各変数5施行の加算平均値を用いて解析処理した.なお統計処理には統計解析用ソフトSPSS9.0を用いて対応のあるt-検定を行い,有意水準は5%とした.<BR>【結果】各動作条件中の平均歩行速度・平均歩調には統計学的差異を認めなかった.股関節角度・モーメントは歩行周期中の特性点をもって比較した.矢状面運動では関節角度・モーメントとも歩行条件による差異は見られなかった.前額面運動について見ると,立脚初期最大内転角度は普通歩行7.39±3.86degに比べ側対歩では5.48±4.40degと有意に少なく,同期して出現する第1極大外転モーメントは普通歩行0.99±0.13Nmに対して側対歩0.86±0.12Nmと有意に低値であった.さらに立脚後期第2極大モーメントも普通歩行で0.87±0.16Nmに対して側対歩では0.65±0.19Nmと有意に低値であった.水平面運動(回旋)では立脚中期に普通歩行で内旋位を呈するのに対して側対歩では外旋位のまま推移しており,しかしその際にも関節モーメントは普通歩行・側対歩とも外旋モーメントを示した.<BR>【考察】側対歩条件は被験者に「体幹回旋を減じて歩く」ことを要求するが,それにより下肢関節の中で最も体幹(重心位置)近傍に位置し自由度の高い股関節運動は影響を受けていた.立脚初期の股関節外転位で外転モーメントを減じての支持は,立脚初期の早い時期に上位体節合成重心を支持側へ移動させ,内転筋群伸張性収縮による共同収縮が増大したと考えられ,骨盤傾斜運動そのものの変化が生じていたことが予想される.またその差異は特に両脚支持期から片脚支持期へ支持基底面が狭小化する時期に見られ,股関節運動の変化が体重心前方移動を補償することが予想された.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564492032
  • NII Article ID
    130004577846
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a1026.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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