トレッドミル後進歩行トレーニングがパーキンソン病患者の歩行能力に及ぼす影響

書誌事項

タイトル別名
  • ―第2報―

説明

【目的】<BR>パーキンソン病(PD)患者の自覚症状の中で「動作の鈍さ」や「歩きにくさ」は発病後早期から訴えられ,歩行における前傾姿勢,歩幅や歩行速度の減少は本疾患の特徴といえる.理学療法の立場からは早期段階からスポーツや歩行練習を積極的に取り入れ,体力低下を防ぐことにより病気の進行を遅らせるとともに,活発なライフスタイルを構築することが重要な目標になる.昨年の本学会において,PD患者にトレッドミル(TDL)後進歩行トレーニングを導入し,歩行能力と日常活動に好影響があることを2症例で報告した.そこで今回は多数例での検討をしたので報告する.<BR><BR>【方法】<BR>本研究に同意したPD患者23名(男性10名,女性13名,Hoehn and Yahr stage 1:2名,2 :12名,3:9名),平均年齢68.6歳,罹病歴4.8年,対象者すべてにL-dopa含有製剤が処方され平均は287.5mg/日である.TDL後進歩行トレーニング前と12週後に,歩行能力(最大歩行速度,歩行率,重複歩距離),6分間歩行距離(6MD),日本語版UPDRSを評価した.トレーニング条件は,手すりを用い,速度を後進0.7~1.2mile/hの快適歩行,傾斜3%,練習時間は10分間とし週1回の頻度で実施した.結果の解析はwilcoxon符号付順位検定を用い,1%を有意水準とした.なお本研究は,当大学倫理審査委員会において承認を受けた.<BR><BR>【結果】<BR>トレーニング前と12週後の最大歩行速度は中央値1.55m/secから1.77m/secと有意に増大し,また重複歩距離は1.25mから1.33mと有意に増大した.歩行率は146steps/minから160steps/minと増大傾向を示したが,有意な変化ではなかった.6MDは中央値352.5mから415.0mと有意に増大した.UPDRSのADLスコアは中央値9から8でほぼ変化はなかったが,運動能力スコアが16から12と有意に改善した.<BR><BR>【考察】<BR>後進歩行トレーニングにより,歩行能力は最大歩行速度と重複歩距離が増大し,歩行率には変化が認められなかった.これは一歩当たりの歩幅が拡大したことを示し,平地歩行での推進力が高まったと考えられた.また6MDが延長し,UPDRS評価において,特に運動能力スコアの改善が得られた.6MDは高齢者の活動性を強く反映する指標であり, TDL 後進歩行トレーニング条件の下でもその継続により,PD患者の日常の活動性を高める有効な手段になったと考える.後進歩行は前進歩行とは異なり,歩行周期の中で立脚期は前足部から着床し,遊脚期では股関節伸展位に努力して下肢を振り出す.TDLを用いることでこのような歩行様式を連続的に繰り返し,前傾姿勢改善,歩行中における骨盤帯・股関節の伸展,歩幅の増大が得られ,PD患者の歩容改善につながったと推察された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), B0059-B0059, 2005

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564501376
  • NII論文ID
    130005012345
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.b0059.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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