Electronic Goniometerを用いた臨床業務効率改善効果の検討

DOI
  • 曷川 元
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 横山 浩康
    JA埼玉県厚生連熊谷総合病院リハビリテーション科
  • 萩原 礼紀
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 木村 忠彰
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科

抄録

【はじめに】関節可動域(以下ROM)測定は、理学療法士が行う基本的評価でありながら、メモを取りカルテに記入するという作業を伴うため、必要最低限の部位しか測定されていない印象を持つ。臨床では障害関節以外の部位にもROM制限を生じている例も多く、評価の見落としが浮かぶべき問題点の放置につながる危険がある。こうした問題は、繁雑な業務をより簡便に行えることが予防策の一つと考える。そこで我々は、デジタルで角度を表示し、ボタン操作で測定角度を記憶、パソコンでの結果出力を可能としたElectronic Goniometer(以下 E-ゴニオ)を開発し、これまで多施設間で研究を行ってきた。今回は新たにパソコンへの出力・プリントアウト機能を含めた臨床業務効率改善効果について検討したので報告する。<BR>【対象と方法】平成16年9月から11月に2病院のリハビリテーション科に依頼があった患者に対し、5名の理学療法士が東大式鉄製角度計(以下東大式)とE-ゴニオを用いてROM測定を行った。測定は初期評価時に行い、東大式とE-ゴニオでそれぞれ測定方向数の合計が300に達した時点で測定を終了した。評価に使用する角度計は無作為に割り当て、測定部位と測定方向数は検者の任意とした。この測定における測定方向数の合計が300に達するまでに要した患者数、患者1人あたりの測定方向数、1運動方向あたりの測定・記録に要した時間を比較した。検定方法にはMann-Whitney U検定を用い有意水準1%未満で有意差ありとした。<BR>【結果】測定した患者数は、東大式44人、E-ゴニオ22人であった。患者1人あたりの測定方向数は、東大式6.9±6.0方向、E-ゴニオ14.1±11.7方向で、有意にE-ゴニオの測定方向数が多かった(p<0.01)。1運動方向あたりの測定・記録に要した時間の平均は東大式60.0±23.3(MEAN±SD)秒、E-ゴニオ14.9±3.7秒で、E-ゴニオの使用により有意に時間が短縮した(p<0.001)。<BR>【考察】E-ゴニオの使用により、測定・記録に要した時間は有意に短縮した。これはE-ゴニオに備えられた角度記憶機能により測定が簡便に行えたことに加え、パソコンへの出力・シール印刷機能により従来のROM測定に不可欠であったメモ取り・カルテ記載の手間が省けたためと考える。これらの機能により生じた時間は、患者治療時間の増加につながり有用と思われる。測定した患者数は東大式に比してE-ゴニオが少なく、患者1人当たりの測定方向数は増加した。これは、測定が簡便に行えるようになったため、患者1人当たりの測定をより濃密に行うようになった結果と考える。本機の使用により、これまで時間の制約から行うことが困難であったボトムアップによる問題点の抽出が容易に行えるようになるものと考える。これまでの実験でE-ゴニオは正確性・再現性において従来の角度計と比較して優れた傾向を示しており、臨床場面での応用が期待される。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A1133-A1133, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564535552
  • NII論文ID
    130005012323
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a1133.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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