成長期少年野球投手における肩関節内外旋可動域について

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  • 3rd内旋に着目して

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【目的】肩関節90°屈曲位(以下,3rd)での内旋ストレッチングは投球障害肩に推奨されており,3rd内旋可動域の低下は肩関節後方構成体の伸張性低下を示していると報告されている.そこで我々は少年野球投手のメディカルチェックと投球動作の三次元動作解析を行い,3rd内旋可動域と肩関節90°外転位(以下,2nd)内外旋可動域および投球動作中の最大内外旋可動域との関係について検討することである.<BR><BR>【対象および方法】少年硬式野球チームに所属する右投投手36名(年齢:11.5±0.5)(平均±標準偏差)にメディカルチェックを行い,3rd内旋可動域20°未満の群(A群:8名,9.1±8.5°),30°以上の群(B群:10名,34.0±4.3°)の2群に分けた.2nd内旋および外旋可動域の測定は,ゴニオメータを使用した.また,投球動作中の最大内外旋可動域の測定は,三次元動作解析装置(Vicon612,計測周期250Hz)とハイスピードカメラ(撮影周期250Hz)を用い,肩関節最大外旋時の肩外旋可動域(MER外旋)と肩関節最大内旋時の肩内旋可動域(MIR内旋)を算出した.2nd内旋および外旋可動域とMERとMIRの最大内外旋可動域を2群間で比較検討した.統計は,対応のない2群間のt検定を行い,有意水準を5%以下とした。<BR><BR>【結果】2nd内旋可動域において,A群は37.9±9.4°,B群は56.7±13.3°でA群はB群に比べ有意に低値を示した(p<0.01).2nd外旋可動域はA群で139.5±10.4°,B群で139.7±15.9°であり,有意差はみられなかった.また,投球動作中のMER外旋可動域は,A群で179.8±12.0°,B群で160.7±14.3°であり,A群はB群に比べ有意に高値を示した(p<0.01).MIR内旋可動域はA群で21.8±7.3°,B群で30.4±12.8°であり,A群はB群に比べ低い傾向にあった(p<0.1).<BR><BR>【考察】結果より,3rd内旋制限のあるA群が,2nd内旋および投球時のMIR内旋可動域に対して低値を示していることから,それぞれの肢位に肩後方軟部組織の柔軟性低下による制限が起こっていると考えられる.さらに投球時,内旋制限があることで肘関節の負担増加や内旋時の上腕骨頭の前上方偏位が起こり,投球障害肩および肘が発生しやすくなると考えられる.外旋では両群の2nd外旋可動域の変化がないのに対し,投球時ではA群が有意に増加していた.これは投球時には他動的可動域とは異なる力が加わっていた可能性があり,後方軟部組織の柔軟性低下から,骨頭の後上方偏位や生理的可動域範囲を超えた関節内運動が起こっていたと考えられる.以上から,投球障害を予防するためにも肩後方軟部組織の柔軟性の評価および改善が必要であると考える.

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  • CRID
    1390001205564547712
  • NII Article ID
    130005013398
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.a0548.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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