化膿性腰椎椎間板炎の一症例
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説明
【はじめに】 第40回日本理学療法学術大会にて、当院における椎体椎間板炎の現状を報告したが、椎体椎間板炎に対する理学療法の報告はまだ少なく、理学療法も難渋していることが多い。今回、長期にわたり画像所見、血液データ、理学療法の経過を追えた一症例を報告する。<BR>【症例】 32歳男性。平成17年1月4日に腰痛出現。翌日に他院受診するも腰痛改善せず、1月7日に激しい腰痛、40°Cを超える発熱のため救急車にて当院搬送され同日入院となる。入院時WBC9890、CRP6.21と炎症所見を認め、MRI施行しL5/S1の化膿性椎間板炎と診断された。<BR>【経過】 治療はベッド上安静臥床、抗生剤を開始し、平成17年2月3日のMRIにて椎間板内に膿の貯留が認められ椎間板ドレナージ施行。炎症反応が低下(WBC8860、CRP0.38)した後、3月3日より理学療法開始となった。理学療法所見はMMTにて筋力は4~5レベル。股関節伸展両側-10°、SLR右55°、左50°であった。股関節伸展時痛は右<左であった。起立板での立位練習より開始し下肢筋力強化、股関節可動域練習、硬性コルセットを装着下にて歩行器での歩行練習を施行した。炎症の再燃もなく約3週間で独歩安定したため4月2日に退院となった。退院時は股関節伸展右5°、左0°、筋力はほぼ5レベルまで改善したが左腸腰筋、左腓腹筋は4レベルであった。退院後も理学療法を1~2回/月の頻度で継続した。4月13日より職場復帰、6月20日より軟性コルセットへ変更となった。9月26日からコルセットを外し、体幹可動域練習を追加し施行した。理学療法所見では、股関節伸展右15°、左10°、SLRは右75°、左65°と改善はみられたが、左股関節伸展時の伸張時痛は残存した。MMTにて筋力は5レベル。前屈動作ではFFD-33cm、後屈動作では膝関節屈曲動作を認めた。1ヵ月後の前屈動作ではFFD-19cm、後屈動作での膝関節屈曲動作を認めなくなった。歩行速度76m/分、ケーデンスは114歩/分であり、健常歩行速度と同等レベルに改善していた。<BR>【考察】 昨年度の報告では化膿性脊椎椎間板炎において麻痺がみられない場合は、ほぼ発症前と同等のADLを獲得できている症例が多かった。本症例も発症後約4ヶ月で職場復帰している。身体機能面では、長期臥床による筋力低下がみられたが理学療法経過とともに改善を認めた。発症時から腸腰筋緊張による股関節伸展制限がみられ、炎症反応の陰性後も腸腰筋の拘縮と思われる股関節伸展可動域制限、長期安静による体幹可動域制限が残存している。理学療法を施行する上で、廃用性筋力低下に対して筋力強化練習、可動域に関しては特に股関節伸展、コルセットを外した後は体幹の可動域性改善が必要であると思われた。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), C0344-C0344, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205564560384
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- NII論文ID
- 110004994705
- 130004579273
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可